「台湾映画祭」で戎義俊・福岡総領事が酒井充子監督と対談

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戎處長と酒井監督

 

台湾映画祭上映実行委員会(毎日新聞西部本社ほか)が主催し、台北駐福岡経済文化辦事處などが後援する「台湾映画祭」が9月14日~19日の間、福岡アジア美術館で開催された。

これは福岡市の「アジアフォーカス・福岡国際映画祭」の関連企画として行われたもので、上映されたのは「台湾萬歳」、「海の彼方」、「百日告別」、「台湾新電影時代」、「南風」、「恋のダンクシュート!」の6作品。

国内初上映、九州初上映のものが多いだけに、見逃しのないように毎日3作品ずつ上映し、どの作品も期間中2日に一度は鑑賞機会があるように配慮された。

台湾映画祭2017(左)と「台湾萬歳」(右)のチラシ

初日の14日のオープニングセレモニーで主催者を代表して最初に挨拶に立った毎日新聞西部本社・編集局長の山本修司氏は、アジアの玄関口・福岡における台湾映画祭が日台両国の理解を深め、人々の絆を強めることに大いに役立っている事、重厚なドキュメンタリーから軽快なポップまでバラエティに富んだ今回の6作品を大いに楽しみ、これをきっかけにぜひ台湾を訪問し、友好、親善を深めて欲しいと述べるとともに、今年で8回目を迎えるなど、映画祭が長く続いてきた事に対して、関係者の努力と応援してくれている人々への謝意を表明した。

毎日新聞・山本修司編集局長

 

開催3日目の16日には上映作品の1つである「台湾萬歳」の酒井充子監督が駆けつけてトークイベントを開催した。

酒井監督は山口県周南市生まれ。新聞記者時代に台湾を訪れ、見知らぬおじいさんに流暢な日本語で話しかけられ、日本人教師の思い出を聞いたのをきっかけに台湾への興味を深め、台湾の映画を作るまでになったが、トークイベントの最初に、今回の「台湾萬歳」を、日本語世代に焦点を当てた「台湾人生(09年)」、言論弾圧など厳しい戦後を生き抜いてきた人々の姿を追った「台湾アイデンティティー(13年)」に次ぐ三部作の最終章であり、台湾の大自然と、それに向き合って懸命に生きる人々の営みをスクリーンに焼き付け、台湾の奥深さに迫ったつもりである、と紹介した。

そして、この映画の主役ともいうべき原住民族について、彼らは総人口2,300万人の2.3%に過ぎないが「原住民族がいたから台湾がある」という考えを披露し、彼らの明るさ、強さ、エネルギーを探ることがこの映画の目的の一つにもなっていると述べた。

「台湾萬歳」の酒井充子監督

 

続いて、台北駐福岡経済文化辦事處の戎義俊處長(総領事) が登壇し、藤永前香さん(エフエム福岡元アナウンサー)の司会で酒井監督と映画のこと、台湾のことを熱く語り合った。

司会:7月に台東県で「台湾万歳」を上映されたと聞きましたが?

酒井:はい。完成披露に500人もの人が駆けつけてくれました。会場が地元の高校の体育館で冷房設備がなかったので、大きい扇風機を回しながら上映しました。

司会:戎處長は、映画のロケ地になった台東県にお住まいになったことがあるそうですね。

戎 :はい。私は父親の仕事の関係で台湾のあちこちに住み、この映画に出てきた花蓮に小学校時代を含めて6年半住んでいました。その時のクラスメイトの半分以上が原住民で、彼らと一緒に高い山にも登り、果物を食べました。そのうちの何人かとは今も文通しています。映画の中の「突きん棒漁」の海の景色は素晴らしいですね。この映画を見た方が台湾の南東部の魅力を感じ取ってくれれば良いですね。

 

司会:この映画を見て、台東県に行きたいと仰る方もおられるようですね?

酒井:はい。この映画は、絶対に台東県に行きたくなる映画なのです。

戎 :台湾の南東部は日本人にとって、まだ馴染みが薄い場所のように思います。「花蓮や台東は遠い」という印象を持っている方が多いようですが、それは誤解です。いま台北から台東までは列車で3時間半しか掛からないのです。もちろん飛行機の便もあります。花蓮や台東の原住民の歌、踊りなどの文化は素晴らしいものなので、ぜひ訪問して頂きたいですね。

戎 :スポーツも盛んで、良い選手を沢山輩出しています。1960年のローマオリンピックで10種競技の銀メダルを取った楊伝広選手も台東県の出身です。いま読売ジャイアンツで活躍している陽岱鋼選手も台東県の出身です。花蓮と台東は、台湾の若い人たちの1番の人気スポットになっています。

酒井:エバー航空のコマーシャルに出た俳優の金城 武さんも台東県と関係がありますか?

戎 :金城 武のコマーシャルフィルムの背景は台東県の「池上」というところです。「金城 武の木」が植えられていて幸運をもたらす木ということで観光スポットになっています。触るとお金持ちになると言われています。

酒井:池上と言えば米どころですね。

戎 :池上米はおいしいですよ。鉄道の駅では池上弁当を売っています。昔は竹の弁当箱に入っていました。売り子が駅のホームで「ベント、ベント!出来たてほやほや!」と言って売っていました。

「ベント、ベント!出来たてほやほや!」を真似て

 

司会:その他の台湾の魅力を上げて頂けますか?

戎 :観光地としての台湾の魅力を3つあげたいと思います。それは「人」、「山」、「果物」です。「人」に関しては、台湾の人は優しく、おもてなしが好きだいということです。日本人に対しては特にそうです。

酒井:日本から台湾へは何人くらい観光客が行っていますか?

戎 :去年は1年間で189万人でした。

酒井:台湾から日本へは?

戎 :429万人でした。230万人の差があります。

酒井:もっと台湾へ行ってもらいたいですね。

戎 :2つ目の魅力は「山」です。台湾には3000メートル級の山が100座あり、とても綺麗です。台湾で一番高い玉山(旧名「新高山」)は富士山より高い山です。2年前に両山が姉妹提携しました。

3つ目は「フルーツ」です。日本に無い美味しい果物が沢山あります。そのうち「釈迦頭」は台東が産地です。残念ながらこれは日本に入っていません。その他スターフルーツなど、日本にないものが台東県には豊富にあります。

司会:「今こそ台東県!」ですね。

酒井:もう1つの台湾の楽しみ方は自転車旅行ですね。台湾映画「練習曲」の中で聴覚障害の主人公が自転車で台湾を一周するというシーンがあり、この作品のヒットがきっかけになって、台湾で自転車による旅行がブームになりましたね。

戎 :「環島」と言います。台湾には世界の4割を生産する「ジャイアント」という自転車メーカーがあり、環島が人気です。

酒井:自転車道も整備されていて、快適な旅が出来ますね。

司会:「台湾萬歳」は「台湾人生」、「台湾アイデンティティー」に次ぐ三部作の最終章と謳っていますが、台湾関係の映画製作はまだ続きますか?

酒井:はい。最終章と名付けてしまったので「これで終わりですか?」と聞かれますが、別の角度からこれからも台湾をテーマにした映画を作り続けるつもりです。

戎 :映画の素晴らしさをあるユダヤ人が「人生最高のフィードバックのある4つの投資の1つ」と言っています。その意味は「スクリーンの中に入って、他の人の生活や体験をシェアできる」ということです。

他の3つは、「他の人の魂を覗き見ることができる読書」、「見知らぬ環境に行くことで他の人の感覚を知ることができる旅行」、「自分自身の内心と対話することができる瞑想」です。

映画は素晴らしいものです。私も時間がある時はなるべく映画館を覗くようにしています。酒井さんには今後も台湾をテーマに人生を豊かにする映画を撮り続けて頂きたいと思います。

酒井:有り難うございます。

今後も台湾をテーマにした映画を撮り続けます。

 

なお「台湾萬歳」はこのあとも全国の劇場で公開を予定している。(詳細はhttp://taiwan-banzai.com/

及びhttp://taiwan-banzai.com/theater.htmlで)