平渓のランタンを「筑豊」の空に飛ばしたい!

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台湾外交部光華雑誌及び株式会社スターフライヤーの提供写真を合成

台湾の近代化に大きく寄与した石炭のまち田川市。道路やビルの建設に欠かせないセメントを供給した香春町。「筑豊」と呼ばれるこの地域で平渓のランタンを飛ばせば、北九州~桃園を結ぶ直行便や姉妹提携している台鉄・平渓線と平成筑豊鉄道が提供している相互サービスなどとの相乗効果で日台の交流がさらに盛り上がると期待される。

陳忠正総領事(台北駐福岡経済文化辦事處處長)が8月15日に訪問した筑豊の町は台湾と縁が深い。日本統治時代の1918年には、三井鉱山と台湾の顔家が共同で基隆炭鉱を創業し、田川炭鉱(三井田川鉱業所)の技術者が大勢台湾へ渡った。終戦後日本人が引き揚げた後も炭鉱を介した両地の交流が続き、2016年には田川市の石炭歴史博物館と新北市の新平渓煤鉱博物園区(炭鉱博物館)が友好館協定を結んでいる。それに続いて2018年5月には、台鉄・平渓線と平成筑豊鉄道が姉妹縁組を締結。10月からは北九州~桃園空港間にスターフライヤー社が毎日一便の定期便を開設した。

これに日本の観光客にも人気のある平渓線・十分の天燈(ランタン)上げを組み合わせれば、日台の

一体感がさらに深まるのではないかというアイディアが陳総領事の筑豊訪問を実現させた。

二場公人田川市長(上の中央)、筒井澄雄香春町長(下の右から4人目)を訪問した陳総領事一行

最初に訪問した田川市役所では、二場公人市長と佐々木允県会議員が市と県の両方の立場から台湾との交流の現況と将来への意気込みを語った。

香春町の筒井澄雄町長からは、日台交流の夢とともに、セメントの原料である石灰でコーティングした強い紙や廃プラスチック問題に対処できる買い物袋の生産工場の誘致構想などの新しい取り組みが披露された。

次に訪れた田川市石炭歴史博物館では、森山沾一館長と福本寛主任(学芸員)から炭鉱を通した田川市と台湾の深いつながりについての説明を受けるとともに、山本作兵衛の炭鉱画を見学した。また、そこに中国語の説明員が常駐していることに感銘した。

説明員から中国語で炭鉱画の説明を受けた

最後に訪問した平成筑豊鉄道では2018年5月に台鉄・平渓線との間で技術協力やお互いの利用客へサービスを提供している。

台鉄平渓線は台湾屈指の炭田といわれた菁桐坑開発のために敷設した専用鉄道が前身であり、平成筑豊鉄道は田川炭鉱から八幡製鉄所や若松港などへの石炭輸送のために開設された。「石炭輸送」が両者誕生の共通点だ。

民間のサラリーマンから公募で平成筑豊鉄道の社長となった河合賢一氏は、就任以来、運転本数や新駅を増やすなどの積極経営を行い、沿線の通学生や病院に通う高齢者などに大いに歓迎されている。また線路の枕木のオーナーになってもらう「まくらぎオーナー制」や列車内のつり革のオーナーになってもらう「つり革オーナー制」を導入して地域の人々とつながりを深めている。

また3月からはJR九州の「七つ星列車」の向こうを張った豪華列車を投入して直方から行橋までの3時間半を食事込み14,800円で楽しんでもらう「ことこと列車」を運行させ、乗車率90%という好業績を上げている。

「七つ星」クラスの車内

このような基盤の上に平渓線沿線で人気の高いランタンフェスティバルを持ち込み、国内はもとより、台湾からも更に多くのお客様に来ていただこうというのが今回のアイディアだ。

そのための1つの方法として、直行航空便を利用してこの地を訪れる人に平成筑豊鉄道のレールパスを発行する。逆に、鉄道会社が割引航空券を発行する。飛行機や鉄道の利用者に博物館や地元のお店の優待券を提供する。歴史や文化を説明するボランティアを募る。炭坑節まつりなどで一緒に踊る。そしてこの空に台湾からも提供をお願いして数百個のランタンを飛ばすなど、歴史と地域の特性を生かした顕在的・潜在的なリソースをパッケージ化して新らしいサービスを生み出すことが話し合われ、それぞれがその実現に向かって関係先と折衝するなど、努力することを約束した。