台湾、国際的な地位の上昇 ー米国が台湾にビザ免除

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ICチップを搭載した台湾のパスポート
ICチップを搭載した台湾の旅券(e-パスポート)

外交部はICチップ非搭載の旅券所有者にe-パスポートへの切り替えを呼びかけている

~11月から実施~
 米国政府は10月2日、11月1日より米国への短期入国者の査証(ビザ)の免除対象に台湾を加えると正式発表した。これを受けて台湾・外交部(外務省に相当)は直ちに声明を発表。「台湾へのビザ免除措置の実施は台湾と米国間の経済貿易関係や観光面で交流促進にプラスになる」とした。このほか実施後は、これまで渡米の際に必要だったビザ申請料の5,000台湾元(約13,600円)が節約できるとした。
 
 台湾のパスポート所有者の渡米ビザ免除は11月1日から実施される。台湾から90日以内の商用、観光目的の旅行者のビザ取得は不要となるが、ICチップ入りに更新されたパスポートの所持と、日本国籍者が渡米する際と同様に事前にインターネットで「電子渡航認証システム(ESTA)」に申請し、認証許可を取得する必要がある。
 
 今回の措置で米国の「ビザ免除プログラム(VWP)」対象は、台湾を含めて37カ国・地域となる。また、37カ国中、台湾は米国と正式国交がない唯一の対象国となる。また、中国は対象にはなっておらず、中国人から「台湾のパスポートを取得したい」という問い合わせが台湾当局に殺到している。
 
 台湾外交部の夏李昌・報道官は「台湾へのノービザ措置の実施は、台湾の人たちの法律を守る精神と国民の質のレベルへの評価でもあり、台湾とアメリカとの緊密な相互関係が強化される証でもある」と指摘する。同時に経費面でのメリットにも言及した。一方、米国・国土安全保障省・ナポリターノ長官は「今回の決定は米台関係の大きな前進だ」と台湾人のノービザに歓迎の意を表した。
 
 在日台湾人の間では「面倒だった手続きがなくなるのも嬉しい。台湾が世界の中で地位確保と知名度アップにつながる良いチャンスだ」と、グローバル化の流れにさらに溶け込むことができることを喜ぶ声が多く出ている。
 
また、米国・国土安全保障省調査によると、2011年度(10年10月~11年9月)に約24万人の台湾人が米国を訪れているが、うち12万人が米国への観光ビザの申請をしている。このため、免除実施後はさらに訪米者が増えることが予想されている。
 
 台湾大手の旅行会社によると、「現時点で11月以降の訪米ツアーの申し込みは増加しており、確実に10%以上は増えている。これから旧正月の大型連休に向けて、さらに増加することが予想される」としている。さらに「今まではアメリカのビザを取得するために複数の書類を揃えてAIT※まで出向いて面接するなど複雑な手続きが必要だったが、これからはその必要がないので、気軽にアメリカに行けるようになる。英語を勉強している台湾人は多く、自身の英語力を試すためにもアメリカへ旅行する人は老若男女問わず増えるはず」と理由を述べている。
 
 現在、米国がノービザ措置を提供しているのは、アジア太平洋地域ではオーストラリア、ニュージーランド、日本、シンガポール、ブルネイ、韓国の6ヵ国。台湾は7カ国目となる。今回のノービザ措置は、観光はもとより世界中を飛び回る台湾のビジネスマンにとってもさらなる飛躍の足がかりになるとみられる。
 
※ AIT…米国在台湾協会(American Institute in Taiwanの略)。アメリカ合衆国が国交のない台湾に設置した実務関係処理のための窓口機関。形式的には非政府機関であるが、実質的にはアメリカの駐台湾大使館・領事館にあたる。台北市と高雄市に所在する。