【記者随想ー台湾生活】「坐月子」とは何ですか?

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「坐月子」は何ですか?(写真:Pixabay)

「結婚の条件と言えば、子供を産んだら良い『月子センター』の予約を取ってくれる人がいい」「『坐月子』でさえやらせてもらわない夫はだめ」「女性にとって妊娠は大変だから『坐月子』はとても重要だ」。

台湾では「坐月子」という言葉が、日常生活でよく使われる。電子掲示板やSNSで頻繁に「夫に『坐月子』をやらせてくれない、どうしよう」という悩みを持つ女性の投稿を見かける。コメントではほとんど「ひどい」「こんな夫だったら早く離れた方がいいよ」が殺到している。

一体「坐月子」とはどんなことだろう?

「坐月子」は台湾式産後ケアのこと

見出しの通り「坐月子」はつまり、台湾独自の台湾式産後ケアのことだ。台湾では昔から女性は妊娠中に身体に負担がかかり、お産の過程で体力を消耗するため、産後はきちんと休息しなければ体調を崩しやすい。しかも高齢であればなおさらだ。

産後の女性の身体を回復するために、産後約1カ月間に特別の飲食調理や適度な運動が必要となる。これこそが「坐月子」そのものだ。

外国人から見れば、これはおかしいと思うだろう。例えばイギリスのキャサリン皇太子妃が3人の子供を産んだが、いずれも産後の翌日には退院。記者に微笑みながら手を振っていた。これも一時台湾で話題となり「ほんとに『坐月子』が必要なのか?」と論戦が巻き起こった。

なぜ、こういう風習があるの?

科学的な見地から「坐月子」は、古代においてとても重要なものとされた。なぜなら、昔の人の食生活はなかなか栄養が行き届かず、現代人と比べても虚弱だったと想像がつく。また医療技術も先進的ではなく、子供を産むことは生死にかかわることだからだ。古代女性のお産は、産後に十分な休養と栄養バランスの良い飲食しなければすぐ病気になってしまったからだ。

現代社会においては、日常の飲食生活でたくさん栄養を摂取でき、運動の習慣や医療の進歩もめざましいため、お産の危険性が下がっている。これはキャサリン妃が生産の翌日にすぐ退院できた要因でもある。

ここで「じゃ別に『坐月子』しなくてもいいのでは?」という疑問が出るだろう。しかし「坐月子」は現代でも新たな意味を生み出している。

それは女性への気配りだ。無論昔の婦人と比べて現代の女性の身体能力は強い。台湾では、職場で働く女性の比率や男女平等の提唱など、女性の自主権と女性への尊重が進歩しているからだ。

これにより、今の台湾で「この10カ月間ご苦労様でした、ゆっくり休んでください」との視点から、女性が産後に「坐月子」を取るのが常識になった。台湾男性の中でも「妻に『坐月子』をしてあげたい」という認識が広がり、してあげない男性が「ダメ男」に扱われるのも極めて普通のこととなっている。

具体的に「坐月子」は何をする?

坐月子で一番重要なのは飲食管理(写真:Pixabay)

「坐月子」の内容には諸説あるが、一般的には二つ。一つは「飲食管理」だ。「坐月子」の期間に「月子餐」と呼ばれる料理を1日3食採る。飲食の内容は漢方入りのチキンスープや煮込みの豚肉、野菜炒めと雑穀米のご飯など、いずれも専門の管理栄養士が計画したメニュー。すべての料理に調味料などはあまり使わず、料理方法を工夫して食材の鮮味を引き出している。

もうひとつは、専門家が設定した運動で体力回復を図り、月子センターなどの専門機関で産婦と子供をある時期から同房させるなど、どうやって子供の面倒をするか、また、どうやって母乳を集めるかなど、一つ一つの知識を教える事である。

つまり「坐月子」は女性身体の回復と子供の世話などをしっかりと実行する事なのだ。

どこで「坐月子」すればいい?

昔の台湾は、専門の月子センターより家で「坐月子」をする人が多かったが、最近は月子センターを選ぶ人が急速に増えた。理由は家族に迷惑をかけたくない、プロの人に任せたいなどがその理由だ。

台湾の月子センターは、徐々にホテルレベルの快適性が揃っており見学もできる。人気の月子センターは予約が取れないこともある。さらに、家で「坐月子」を選ぶ人に楽にしてあげたいという考えから、「月子餐」という出前もある。目下、人気急上昇だ。

今回は台湾独自の「坐月子」について紹介しました。もちろん今では別に「坐月子」をしなくてもいいという考えを持つ人がいますが、台湾ではまさに「常識」となっています。一番重要なのは、産婦の気持ちを尊重し、するかしないかについて話し合って、お互いに納得できる方法にすることなんです!

(文:ワンワン)

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