中国、今年の台湾「金馬奨」参加見送り

0
第56回金馬奨のポスター(写真提供:中央社、金馬奨執委会)

中華圏映画の祭典「第56回ゴールデン・ホース・アワード」(金馬奨)に今年、中国の映画関係者が参加しない見通しである事を8月7日、中国の国家新聞出版広電総局の機関紙が報じた。この理由について中国の対台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の龍明彪副主任は、「台湾の現在の政治情勢などがさまざまな問題を引き起こす」とした。
これを受けて台湾行政院の報道官は同7日、台湾への制裁だとしたら誤った行動だと中国を非難。金馬奨不参加によって「損失を被るのはもちろん台湾ではない」と話した。
なお、金馬奨への参加の是非について中国の映画関係者は「業界内では長く議論されていた」と話し、来年1月の台湾総統選挙にも言及し、さらに昨年起きた「舞台上で政治的な発言」なども懸念材料とし、台湾人の反中感情が高まることを憂慮しているとの見方を示した。また中国側の関係者は、不参加による影響拡大について「映画交流の中断を意味するものではない。一時的な見送り」と回答している。復帰の時期も「また話す」としている。
一方、台湾側は中国の金馬奨不参加への影響について、ベテラン映画プロデューサーの李亜梅さんが「中国側のボイコットが2~3年で終われば賞の公正性や地位に影響はない」と分析。しかし「5~10年続くようであれば影響は必ず受ける」と話した。
金馬奨は台湾で1962年に創設された映画賞で、今年で56回目を迎える。世界中の中国語、華人映画を対象としており、中華圏で最も名誉ある映画賞の一つに数えられている。今年は10月1日にノミネート作品が発表され、11月23日に授賞式が行われる。

唯一の中国の参加映画が再度取り下げ
金馬奨への中国の映画や関係者の参加見合わせを発表した渦中の8月15日、中国の映画監督、チュウ・ユーのドキュメンタリー映画「少年問道」が参加を取り止めない方針を表明したが、その後の同17日、チュウ監督が短文投稿サイトのウェイボー(微博)で同賞への応募を取り下げたことを明らかにした。当初は授賞式前に開かれる映画祭期間中の訪台を期待し、台湾の映画人や道教信徒と交流したいと考えていた。
なお、チュウ監督はウェイボーで「国家電影局の規定に固く服従する」とし、「私と私の作品は金馬映画祭への参加を取りやめ、不参加を取り下げることはない」と表明。自身が有名人ではないため、「参加取りやめの情報が人々の目につかなかった」と弁明し、それにより「多くの人にデマを拡散され、インターネット上に暴力があふれるなどし、身の安全が危険にさらされた」と訴えていた。