台北駐福岡経済文化弁事處の曽念祖處長が熊本県蒲島郁夫県知事と会食した場で台湾の民主化の成果を説明したところ、蒲島知事は、自分の恩師であるアメリカの著名な政治学者S.P.Huntington氏の理論を紹介し、権威主義体制から民主主義体制に移行するのは、極めて難しいと述べた。しかし、台湾は見事に民主主義体制に変容した。それは、蒋経國元総統が絶大な権力を持ちながら、国民党内部の長老の反対を押し切って、民主思想を持っている台湾出身の李登輝氏を大胆に登用し、民主化改革を断行させたからである。その意味で、台湾の民主化における李登輝氏の貢献、業績は勿論であるが、蒋経國氏の役割と功績も大きいと評価した。
続いて、蒲島知事は、それらを熊本県政に当てはめ、議会の圧倒的多数を持つ自民党熊本県連が、「自民党の知事ではなく、県民のための知事を選ぶことが必要だ」と主張し、どちらかと言えば、リベラルである私を強力に支援し、当選に力を尽くした。この二者の関係はあたかも台湾の蒋經國元総統(自民党熊本県連)と李登輝氏(蒲島知事)のコンビネーションのようであると述べた。
曽處長は蒲島知事が台湾の民主化の過程に精通していることと、台湾の民主化の成果への評価を称賛し、そして蒲島知事の早期の台湾訪問を要請した。
熊本の貧しい家庭に生まれた蒲島知事は、地元の農協に一般職員として就職したのち苦労してアメリカのハーバード大学に進み、政治経済及び行政学の博士号を取得した。その後11年間東京大学で教鞭を取り、2008年3月に熊本県知事に初当選、今年3月25日の県知事選では大差で再選を果たした。主な著作として「政治参加」「政権交代と有権者の態度変容」「戦後政治の軌跡―自民党システムの形成と変容」「逆境の中にこそ夢がある」などがある。