【特集】秋の風物詩、日月潭の遠泳大会

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日月潭の遠泳大会
日月潭の遠泳大会

 台中の南東約40km、南投県魚池郷に位置する「日月潭」は台湾で最も大きい湖で、毎秋、湖を横断する遠泳大会「日月潭国際萬人泳渡」が開かれている。1983年に開始され、秋の恒例行事。本来は遊泳禁止だが、年に1回、大会の時だけ「解禁」となる。海抜748m、面積116㎢の日月潭、春には桜まつりが開かれるなど風光明媚で、観光客にも人気が高い。湖の北側が太陽の形、南側が月の形をしていることから、その名が付いた。周回道路約39kmは、サイクリングやツーリングのメッカとなっている。
参加者は2万人を超える
参加者は2万人を超える

救命器材を装着して参加
救命器材を装着して参加

 遠泳大会のスタート前、参加者が列を成す。2万人を超えるエントリー、応援や見物も多く、交通規制が敷かれる。満10歳以上、心身共に健康で、長距離の遊泳能力があれば参加できる。号砲を合図に、参加者達が段階的にスタート。道程は約3.3km。事故防止のため、救助器材を装着する。大会のためにトレーニングを積んできた者もいれば、観光半分で、思い出作りに参加する者もいる。25度前後の水温でヒンヤリ。湖の中で泳ぐ人が密集し、自由に泳ぐことはできない。最前列だけは、自由なスピードで泳ぐことができるが、2列目以降は、前の人のキックで蹴られたり、密集する中で泳ぐ辛さを味わう。スピードが出せない、抜くに抜けない中で、一番の強敵は「波」だ。海ほどに強くはないが、湖にも波はある。スピード勝負ではなく、追い抜くことをしないため、ほとんどの参加者が方向感覚を保ちやすい平泳ぎ(前を向くため)を選択する。手で平泳ぎの動きをしても、波が口の中に入る。また、長時間、波に揺られているため、「船酔い」に近い状態になる。参加者の一人は言う。「泳ぐというより、船酔いと戦いながら、足だけ動かして浮いていたような感じです」
台湾、秋の風物詩
台湾、秋の風物詩

 そして、もう一つの難敵は排泄だ。前列の速い人は1時間台で泳ぎきってしまうが、多くは2時間半〜3時間を要する。マラソンならば、途中に簡易トイレがあり一般市民ランナーは用を足すこともできるが、水泳は用意ではない。仮設トイレが浮いているのはコースから逸れた位置、わざわざ寄る人は少ない。どうやって足しているのかは、読者のご想像にお任せするのみだ。ゴールにはシャワーが用意され、主催機関から、参加者全員に水泳帽、遠泳証明書、弁当、記念品等が贈られる。3.3kmの長距離を泳ぎきった参加者達は、充実感、達成感とともに、酔いから解放された安堵感にも浸っているように見えた。
風光明媚な日月潭
風光明媚な日月潭