フェスティバル/トーキョー(略称:F/T)の公募プログラムとして来日公演を続けている台湾のダンスパフォーマンスグループ「林文中舞団(WCdance)(主宰:林文中)最後の公演が、11月17日、南池袋のシアターグリーン(5階劇場)であった。
11月14日に記者会見があり、作品の一部が公開されていたが、台湾のダンスシーンに影響を与えているという作品の“全体”を観たいと思った。
午後5時から約1時間半の舞台だった。真ん中に四角い板敷きがあるのみのシンプルな空間。満席で数十名の小劇場空間で、不思議な歌と音楽、モダンダンスのワークショップ、ドキュメンタリー映画が融合した、「南管コンサート」とも「現代ダンスパフォーマンス」とも、観る人により様々な呼び方ができる舞台だった。
冒頭、スクリーンにモノクロのドキュメンタリー映像が流れる。林文中が若いダンス専攻の男女学生や若手ダンサーに「南管」について尋ねる。「知らないわ」「古い中国の音楽みたい」「聞いたことがない」という答えが返ってくる。一方で、国立台北芸術大学の学者や高名な評論家に、南管という伝統音楽の現在と未来について質問する。「南管が生き残るには伝統的な価値観を超えて変化していく必要がある」といった答えが返ってくる。
林文中は、「小南管」という作品についてこう語っている。
「『小南管』は、我々若い世代が、いかにして伝統との繋がりを見出すのか、どのように伝統との連帯を生み出すのかを探るため創作しました」
林文中は若手ダンサーとともに「南管」を習得するために、伝統音楽の世界に弟子入りし、“師匠”たちとの葛藤のなかで生じた“自我の危機”を、自らの本来の表現手法であるダンスパフォーマンスの新しい表現形式の中に取り入れた。
白い身軽なコスチュームを身に着けた女性ダンサーを中心とした様々な舞踊。その変幻自在な振付に、振付家・演出家としての林文中の本領が発揮されているだろう。「南管」という台湾で400年続くという伝統音楽が、現代のダンスパフォーマンスという形式と見事に融合したのではないか?