日台関係の未来に向けて今、考えること
Q台湾と関係が深い政治家は少ないように思いますが。
A少ないですね。台湾と話し合える政治家を作っておかないと日台関係には損だと思います。例えば、尖閣問題です。政治家は選挙前は愛国的、保守的になりますから、その意味で馬英九総統が2012年5月に2期目の選挙に直面するなかで、尖閣問題を強く言うというのはある程度わかります。その後、半年経って総統府に大きな変化が出てきたかと言えば、表面的にはそうは見えない。(台湾は尖閣問題では)中国とは差別化しています。日台関係の重要性をすごく理解しているわけです。
我々も水面下で働きかけていますが、台湾と話のできる政治家が折に触れて台湾に出かけて話をしていくことが大事だと思います。その「(関係改善の)きっかけは何か」と言えば、象徴的な流れになっていくのが漁業補償問題でしょう。もう少し早く尖閣の漁場を日台との共同漁場にしておけばよかった。日本統治時代は尖閣周辺は自由に行けてたんです。それが戦争が終わったら行けなくなった。昨日、今日の話じゃないわけですね。そんなわけで、この漁業補償問題は、外務省の方針等に対して議員が党派を超えて協力して政治力を発揮できるようにしておかないといけません。数だけで言えば、日華議員懇談会は日中議員連盟に負けていますからね。
Q馬英九中華民国総統と親しいとうかがいました。
A馬英九中華民国総統をかばうわけではありませんが、馬総統はアメリカ(ハーバード大学)に留学しているときから尖閣は台湾の領土だと言っていたんですね、国民の人気取りでも、昨日今日、思いついたわけでもない。それで彼が台北市長を辞めて総統選に出るといって来日したときに日華議員懇談会と会合を持ったわけです。その際に、私と西村眞悟議員がそのことで責めたんです。事後談ですが、馬総統はこの時、私を民進党(派)だと思ったようです。その後、「大江さんは日本の国会議員として日台関係をどうするのか、党派を超えて考えておられる方だということがよくわかった」とおっしゃって、ですから今では馬総統とはどこでもハグする関係です(笑)。馬総統は残りの任期が3年半。これから尖閣問題はどういう道筋になっていくのか。愛国主義的になるのか、大きな立場で日台関係を改善していくのか、はっきりした方向性はまだ見えませんね。
Q今、日本はアジアで孤立しかけています
A僕がいちばん懸念するのは、ロシアも北朝鮮も韓国も中国も反日ですよね、これで台湾が呑み込まれたら日本は孤立しますよということです。その時、アメリカはこの自助努力の足りない日本を守ってくれるのだろうかと。かろうじてアメリカが尖閣諸島は日米安保条約の対象地域であると言ってくれてるから中国の軍艦が入って来ない。ですから中国と台湾だけに目を向けていればいいわけじゃない。そこで総合的な北東アジアの中での日本の立ち位置がどうかと見たときに、文句なしに日本側についてもらわないと困るのが台湾です。かといって、馬英九総統は両岸関係を縮める政策を進めてきましたから、急に中国から離れて日本寄りの政策を取ることはないでしょう。ところで、政治家は何をするにも大義名分が必要です。それが何かと言えばまず漁業問題を日本がどこまで大きな気持ちのなかで、しかも北東アジアの中の立ち位置を決める中で、これをツールとして使うかということだと思います。幸い、日本は政権が交代しました。これは新たな話合いの場を持てる大義名分になります。
Q日台関係と日中関係の違いについてどのようにお考えですか?
A僕は日台関係と日中関係は違うと思っています。というのも、日中関係は好環境のなかで作りあげられてきましたが、台湾については、40年間外交関係がなかった。非常に厳しい環境のなかでこれまでやってきたわけですからね。両国の政治指導者や財界も含めてよく訓練されているというか、鍛えられていると思います。だからそんなに心配はしていません。しかし、これだけ早いスピードで世界が変わっているということになれば、もう少し日本も学習して北東アジアでいちばん大事なのはどの国か、それは台湾だということを知るべきでしょう。日台の観光客数の多さとか、東日本大震災時の200億円を超える台湾からの義援金とか、国民は理解しているんですよね。
Q日台の経済連携、中国進出についてはどうでしょう。
A現状を踏まえた中国への経済進出ということについて考えますと、台湾とEPA、FTAを結んで日本が台湾と合弁企業を作り、ワンクッションおいて中国に行くという、二段戦法がいいと思います。これをどう実現するか。ポイントは台湾の交渉力や人間関係をどう活かせるかでしょう。
Q政権交代で日台関係はどうなりますか。
A12月16日の衆院選でおそらく政権が変わります。日台関係は大きな節目を迎えます。自民党政権になれば今以上にものが言いやすくなりますし、もう少し早いテンポで事態は進んでいくと思います。
(安倍内閣が誕生しました。今までの民主党政権のような素人内閣と違って、経験豊かで実績を持つ政権であり、特に安倍総理は、私が会長代行ですが直近まで、長年日・台交流を続けています亜東親善協の会長として努力をしていただておりました。台湾想いの安倍総理、そして麻生副総理ですから早いテンポで良い方向に進んでいくと思います:12月27日追加)