新春インタビュー 株式会社ボルテックス代表取締役社長・宮沢文彦氏

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株式会社ボルテックス宮沢文彦代表取締役
株式会社ボルテックス宮沢文彦社長

他社の追従を許さない“逆張り”戦略で躍進

西武新宿線西新宿駅近くにあるオフィスビルに本社を構える株式会社ボルテックスは、毎月一定の賃貸収入が見込める収益不動産のなかでも、区分所有オフィスという分野に特化することで急成長を遂げている不動産投資会社である。

ポイントは、“逆張り”戦略という手法にある。通常はビル1棟単位での売買が主流である。一方で、同社は市場で過小評価されていた区分所有オフィスに目をつけることでビル全体を購入するよりも安く区分所有オフィスを購入している。これによって、取れる賃貸料は変わらない上、相対的に高収益を確保でき、空室や老朽化、家賃下落などのリスク対応もし易い“商材”を確保し、中小企業経営者や個人富裕層の心を掴んだ。

平成24年3月期、売上げ約65億円、経常利益約8億円。管理受託資産残高約251億円、管理受託戸数623件、管理物件空室率約4.7%という市場平均を上回る業績だ。

宮沢文彦社長が同社を設立したのは平成11年。そのルーツは平成元年に就職した証券会社だ。「僕は当時、他の営業マンと違って、株式が暴落したり、“今年最大の下げ幅”というタイミングで(お客様に)徹底的に逆張り投資の提案をしました。ポイントは会社が儲かるかじゃない。お客様が儲かるかどうかなんです!」

宮沢社長は、その後、平成7年に現・株式会社レーサムに転職。同社は「日本で初めて対外的な投資主体として不良債権をバルクで買った会社」として知られる。「当時は不良債権処理の真っ只中。その黎明期に外資と組んで、都銀から不良債権をバルクで購入しました。」この時、バルクで取得した際の担保物件はほとんど切り捨てられたが、そのなかに事業系不動産があった。「僕はこの事業系(不動産)をビジネスにしたかったのですが、経営者にその考えがなかった。経営者は事業系不動産をジャンク債と見做していました。けれど、僕は捨てるには惜しい商材だと思ったわけです。それで外に出ることにしたわけです。」

ボルテックスの創業資金は、貯蓄と親族からの借財で賄った。社員は3人。当初は2000万円の物件を仕入れて2200万円で売るところから始めた。「ぎりぎりの在庫量で、給料もぎりぎりまで抑え、オフィスも10年目までは20坪のビルです。社用車もなく個人の車を使用していました。とにかくコストを切り詰められるだけ切り詰めましたね。」

創業から5~6年は、区分所有の仕入れは競売物件がほとんどだった。不人気で入札期限内に誰も札を入れず、翌日、特別売却になった安い物件を買った。その後、競売物件も底をつくようになり、現在は、「1棟のビル(約10億~20億円)を弊社で所有して、長期修繕計画、物件管理も含めて高いレベルで態勢を整えた後、フロアごとに(マンションのように)区分所有化して販売しています。」

ちなみに、同社の事業は大きく3本の柱から構成されている。1.収益不動産の販売、2.その売却物件の運営・管理による手数料ビジネス、3.自ら保有する物件の賃貸事業である。更に、新領域の事業として、実需向けに企業の自社使用物件の販売を始めた。「こちらはウエブや新聞などを使って徹底的なメディアマーケィングをやります。反響は大きく、成約事例も出てきました。」日本の会社は今までオフィスを借りるという選択肢しかなかった。それに対して、同社は必要な広さのオフィスを購入するという新しい自社ビルの形を提案している。

平成25年3月期は、高い利益率を維持しながら、100億円の売上げを突破する勢いだ。成熟マーケットである不動産業において、新市場を切り開く同社からは今年も目が離せない。

●プロフィール 宮沢文彦(みやざわ・ふみひこ)平成元年早稲田大学商学部卒業。平成元年ユニバーサル証券株式会社(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社)入社。平成7年 株式会社レーサム・リサーチ入社(現株式会社レーサム)、営業として活躍。不動産投資コンサルティングを行う。 平成11年株式会社ボルテックスを設立。