阿里山は東アジア最高峰、玉山(3952m)の西方に連なる2000m超の山塊の総称。香り漂う樹齢数千年の巨木群歩道の散策や、祝山などでの日の出見物が観光のメインだ。国家風景区(国定公園)に指定されており、そのうちの1400ヘクタールが「阿里山国家森林遊楽区」となっている。第二次世界大戦前の日本統治下では、玉山とともに「日本の国立公園」に指定されていた。阿里山は「鉄道、森林、雲海、日の出、夕霞」という五つの見所が有名だ。
見所の一つ、嘉義と阿里山を結ぶ阿里山鉄道は標高差約2200mを踏破する全長約71kmの鉄道だ。世界三大山岳鉄道の一つで、車窓からは熱帯林、亜熱帯林、温帯林と移り変わる景観が観賞できる。鉄道は2007年7月、1914年製造の蒸気機関車が修復により復活した。水害の影響で現在も修復作業中だが、台湾観光の一つの名物と言える。また、阿里山駅から神木駅に向かう列車の車両には木も使われており、日本人観光客にとっても「懐かしさ」に似た情緒も湧く。
阿里山と言えば高山烏龍茶の産地としても知られる。駅周辺には香りほのかな高山烏龍茶を飲ませてくれる茶坊もある。また気温も下がり冷え込む阿里山では、お湯に入れた山粉圓(バジルシード)も身体を暖めてくれる。山粉圓はバジリコの種でふやかすとカエルの卵のようにも見えるが、味はほんのり甘く、プチプチとした食感は日本人には新鮮だ。
阿里山森林鉄道の「神木」駅から僅かの場所に巨大なヒノキが横たわっている。以前、このヒノキは、樹齢3000年、樹高35mのヒノキは「神木」として崇められていた。しかし、1956年の火災で枯れ、1997年の落雷でダメージを受けた後、倒壊の危険があるため1998年6月に切り倒された。現在では枯死した状態の神木を眺めることができる。
タイワンヒノキ(紅檜)の原生林としても知られる阿里山。以前は大量に伐採され日本にも運ばれていた。阿里山の紅檜は東京明治神宮の大鳥居や伊勢神宮など日本の神社仏閣にも使われている。訪れた観光客は連綿とした木々に心癒される。最近の「台湾ブーム」により、日本からの観光客は更に増加傾向にある。