郝龍斌台北市長は1月3日、建設中のMRT信義線大安駅を視察し、「(信義線は)東西を結ぶ二番目の幹線になり、信義線に乗って市政府の年越しイベントに参加できる」と今年末の開通を宣言した。MRT信義線は中正紀念堂から東門、台北101/ワールドトレードセンターを経由して象山を結ぶ6.4Kmの路線で、開通後はMRT淡水線と直通運転を行なう計画だ。
台北MRTは1996年の木柵線(現文山線)開通後、着実に路線と営業距離を伸ばしてきた。2011年12月現在の営業距離は112.8Km、一日平均170万人が利用しており、通勤通学、そして観光客の重要な交通手段として欠かすことのできない存在である。特に近年は2009年内湖線、2010年蘆洲線、2011年南港線延伸区間、2012年新荘線(蘆洲線とあわせて新蘆線とも言われる)と開通が相次ぎ、ほぼ一年に一路線のペースで新しい区間が営業を開始している計算になる。
現在、台北市内の南北を結ぶ路線は淡水線、文山内湖線(文湖線)、中和新蘆線の三路線があるが、東西を結ぶ路線は板橋南港線(板南線)のみであり、ラッシュ時になると台北ー忠孝復興の各駅では乗客が乗り切れない「積み残し」が出るなど、慢性的な混雑が続いている。また、万が一板南線が運転見合わせをした際には代替路線がなく、混乱に拍車をかける結果となっている。このため、利用者からすれば郝市長の信義線開通宣言はまさに待望の発表と言えるだろう。象山駅付近に住む男性は「今まで乗り換えが必要だった淡水や士林夜市に遊びに行きやすくなる」と信義線開通を歓迎している。
しかし、信義線の開通によって、MRTの運転形態が大きく変わることが予想されている。現在、中正紀念堂で新店線と直通運転を行なっている淡水線が、信義線との直通運転を開始するからだ。これにより、新店線は淡水線との直通運転を中止し、小南門を経由して西門への運転へと切り替わり、将来的には建設中の松山線と直通運転することが計画されている。そのため、新店線の利用者は、今まで乗り換えなしで行くことができた台北駅や北投、淡水方面へ行くには、中正紀念堂での乗り換えが必要となる。
昨年9月の新荘線忠孝新生ー古亭間が開通した際も同様であり、それまで淡水線北投まで直通運転を行なっていた中和線が、新蘆線への直通運転に切り替えられ、淡水線方面への利用客を中心に、反対の声が持ち上がった。このため、台北MRTは切り換えの3ヶ月以上前から運転本数の増加や古亭や忠孝新生での乗り換えの便利さを大々的に宣伝し、乗客への理解と周知の徹底を求めたが、淡水線方面への利用者にとってみれば、乗り換えの手間が増えたことに変わりはない。永安市場駅近くに住む女性は「台北駅に行くのに不便になった。新蘆線と直通運転しても、そこへ行く用事もない」と語る。
信義線開通に伴う新店線の運行形態変化に関して、既に一部の利用者から不満の声が上がっている。このことは台北MRTも認識しており、信義線開通後の運行形態について「運行効率と利用客の乗車習慣を考慮した上で、早ければ6月には正式決定したい」としているが、信義線のラインカラーは既に淡水線と同じ赤が使用されており、淡水線と信義線の直通運転の予定が覆される可能性は低そうだ。今後新店線利用者に対してどのように理解を求めて行くのか、台北MRTの手腕が試される。