今年の台湾は全国的に好天に恵まれている。例年では雨が多くジメジメした不快な天気が続く北部でもその辛さが軽減され、快適な春を迎えている。と言えば聞こえはいいのだが、実際には喜んでばかりもいられない。春の訪れとともに本格的な農業シーズンを迎える中で、深刻な水不足が懸念されている。

中央気象局の統計を調べてみると、今年1月から2月までの台北の降水量の合計は127.4mmで、同時期の例年平均と比較しても50%程度の雨しか降っていないことが解かる。一方で、中南部の事態は更に深刻だ。台中では例年の10%の降水量しか観測されていないばかりか、高雄では今年の降水量はいずれも0.1mmに満たなかったため測定不能と言う。山間部でも状況は変わらず、2月の日月潭の降水量は例年平均の1%と言う状況だ。
このため、台湾の広範囲に渡ってダムの貯水量が減少している。経済部水利署の発表によると3月20日現在、台湾西部の台北市と基隆市、屏東県を除く地域のダム貯水量が「やや不足」となっており、特に貯水量が不足している桃園県と新北市林口区では「夜間減圧給水」措置が実施されているほか、22日からは高雄地区での「夜間減圧給水」措置の実施が決定した。
農業用水の状況は更に深刻だ。八田与一が灌漑設備を手がけたことでも有名な台湾南部の嘉南地区では、曾文、烏山頭ダムの貯水量が少なく、16日からは同地区で10年ぶりと言う「非常灌漑」と呼ばれる給水制限措置を発動。農業用水の供給量が大きく制限された。二期作が多く行なわれている台湾のコメ農家にとって、春は一回目の田植えシーズンであるが、今後の取水制限の動向によっては、収穫量に大きく影響を及ぼす可能性があるほか、ほかの農作物への影響も避けられそうにない。
元々中南部は冬は乾季となるため、降水量が少なくなる時期であるが、今年は春になっても、雨が降らない「異常状態」が続いている。このことについて中央気象局の鄭明典氏は「例年は『華南雲雨帯』と呼ばれる前線が、(中国大陸の)華南地区から台湾に移動して『春雨』をもたらすが、今年は勢力が活発で台湾の北側に移動してしまった。降雨量は多いが、ほとんどが海上に降っている」と分析する。また、「今後一ヶ月はまとまった雨は降らないだろう」とも予測し、水不足の解消にはまだ時間がかかりそうだ。
今年1~2月の降水量と平均降水量(中央気象局統計資料より作成)
2013年1月 | 1月例年平均 | 2013年2月 | 2月例年平均 | |
台北 | 93.0mm | 83.2mm | 34.4mm | 170.3mm |
竹子湖 | 282.5mm | 232.6mm | 145.1mm | 273.5mm |
台中 | 11.2mm | 30.3mm | 1.2mm | 89.8mm |
日月潭 | 20.0mm | 49.1mm | 1.0mm | 100.0mm |
嘉義 | 15.1mm | 23.6mm | 3.5mm | 57.4mm |
阿里山 | 32.1mm | 71.7mm | 3.5mm | 137.3mm |
高雄 | 測定不能 | 16.0mm | 測定不能 | 20.5mm |