東日本大震災によって発生した津波被害と、福島第一原子力発電所事故から二年。台湾からは惜しみない援助の手が差し伸べられ、日本へ寄せられた義援金の総額は200億円を超え、多くの日本人に台湾人の心の温かさ、日台の絆の強さを認識させた。3月10日、淡水客船第三期ふ頭で台湾に留学中の日本人学生グループが、台湾の震災支援に感謝し、震災の記憶を風化させまいとするイベント「日台・心の絆~震災から二年後の東北に向けて~」を開催した。
台湾大学や師範大学に留学中の日本人学生を中心に構成された「ありがとう台湾実行委員会」は、日本から台湾に感謝の気持ちを伝えるために結成されたボランティアグループ。昨年3月11日にも淡水で被災地からの手紙の紹介や展示、和太鼓や舞踊などのステージパフォーマンスによる文化交流を行ない、多くの台湾人の注目と関心を集めた。二年目となる今年は、台湾大学農業経済学科の内田直毅実行委員長を中心に、「震災を後世に伝えなければならない」と計画が進められた。
好天に恵まれたこの日、淡水は多くの行楽客で賑わい、イベント会場周辺にも沢山の観衆が集まった。交流協会の岡田健一総務部長は挨拶の中で「困難に遭遇した時の友達こそ、本当の友達である。日本人は台湾人こそ本当の友達だと、改めて気付かされた」と述べ、「今、日本人の若者が、台湾の人に感謝の気持ちを伝えるために、色々なイベント行なっている。将来の日台関係はこの若者たちが担っている。交流協会としても、大変喜ばしい事だと思う」と語った。また、日本人会の丹羽康彦理事は「(日本の)若い人たちが、台湾の人たちと一緒に、(震災支援の)営みを続けている事に、非常に意義を感じている」と話した。
今年も昨年同様、和太鼓やウクレレ奏者などによるパフォーマンスが行なわれたほか、遊覧船を貸し切り、被災地の復興状況を紹介するパネル展示や、日本人会の協力による着物体験なども実施された。着物を着て記念撮影をしていた20代の女性は「初めてきちんとした着物を着た」と感想を話し、「WBCの試合の時もそうだったけれど、日本の人は台湾をいつも応援してくれている。嬉しいです」とも話してくれた。交際相手の男性は着物姿を見て「惚れ直しました」と惚気た。
また、会場では来場者に折り鶴を折ってもらうスペースを設け、東北に送り届ける取り組みも行なわれた。子供と一緒に折り紙を折っていた30代の女性は、「日本の皆さんの感謝の気持ちは、普段から感じられていました」、「私たちのほんの小さな気持ちが、日本の皆さんに知ってもらった事が嬉しい」と話してくれた。別の40代の男性は「場所はどこであれ、災害が起こった時にはお互いに助け合うべきだ。同じ地球に暮らしているから、人種差別などしない。僅かな力だけど、それが一つになると、大きな力になる」とも語った。
内田実行委員長は「色んな方に参加してもらい、二年目も沢山の人にサポートしてもらい、開催できて嬉しく思う。台湾と日本の関係がもっと発展してほしい」と語った。このイベントの発起人であり、日本から駆けつけた古堅一希代表は「(昨年は)メッセージを台湾に届けるだけを考えていて、第二回第三回と続けられるかどうかは考えていなかった」と当時の状況を振り返り、内田実行委員長によって二年目のイベントが実行された事については「台湾の気持ちを忘れないと言う意思を引き継いでくれる人がいてくれて、嬉しく思う」と感想を話してくれた。
この日集められた募金や被災者のメッセージは準備が整い次第、気仙沼市と南三陸町などに送られると言う。内田実行委員長はこのイベントを今後も継続していきたい考えで、震災を機に深まった日台の絆を、更に深く強固なものにしたいとしている。