台湾を訪れる日本人観光客や台湾グルメ通の中で、最近、人気の商品がある。それが「不要香菜」Tシャツだ。「不要香菜」とは「香菜(パクチー)を入れないでください」という意味で、台湾の食堂や屋台などで、「パクチーを加えることを拒否したい」場合に使う言葉だ。
パクチーは強い香りを放つハーブで、「中国パセリ」とも呼ばれる。台湾では大腸麺線や麺類、炒め物など様々な料理に使用されポピュラーな食材である一方、独特の味わいを持ち日本ではほとんど流通していないため、日本人では食べつけない人も多い。美食を求めて台湾を訪れる日本人は増加傾向だが、一方で「あの緑の香草が入ったせいで食べられなかった」と不満げに食後感を語る観光客は少なくない。台湾をはじめ、タイやインドネシアなど東南アジア地域でもよく使われている香草・・・。日本人でもパクチーに対し「大好き」な人もいれば「大嫌い」な人もいるなど反応は様々だ。
「不要香菜」Tシャツ、大ヒットの背景は、あるテレビ番組の存在がある。台湾テレビ局で放送されている旅グルメ番組「大口吃遍台灣」だ。日本人レポーター吉田談吉氏が台湾グルメを食べ歩きコメントを述べていく番組で、吉田氏自体が、香菜を食べつけないため、あらかじめ店主に対し「不要香菜」と要望する。リアリティを出すため、要望するシーンはほとんどが編集されずに放送される。リアリティを好む台湾視聴者に受け入れられた同番組だが、一方で台湾在住日本人や台湾を訪れる日本人観光客の間でも視聴され、リアルな台湾ガイドとしての役割を果たしている。「不要香菜」という言葉も番組の常套句とされ、実際に番組のセリフを模倣して注文する日本人もいるという。
この現象に目をつけたのが、日本人デザイナー矢野忠光さんだ。「Tシャツだったらユーモアもあって遊び感覚として受け入れられる。注文する際にTシャツを見せるだけで要望も伝わりやすい・・・」香菜をイメージした緑の生地に、隷書体の「不要香菜」の文字。デザインそのものはシンプルだが、このシンプルさがウケた。インターネットでの販売が中心で、日本人観光客が前もって購入し、台湾夜市で着用して街歩きを楽しむケースも多いとのこと。矢野さんは「このシンプルさこそが日本と台湾を結ぶツールとして最も重要なこと。日本人観光客が遊び感覚で気軽に着て、台湾人店主との交流を楽しんで欲しい」と話している。
参考サイト https://goods.skiyaki.tokyo/products/11624