台湾フルーツの季節到来 日本市場に向け取り組む果物農家を訪問

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台湾は嘉義と花蓮を境に北部が亜熱帯、南部が熱帯気候に属している。一年を通じて豊富な農産資源に恵まれており、近年ではマンゴーやパイナップルをはじめとする、安心で高品質な果物が世界各地へ輸出されている。台湾中南部では5月中旬から多くの果物が「旬」を迎え、急ピッチで収穫作業が行なわれている。今回、台湾物産館を経営する池栄青果と農業委員会の協力により、台湾南部の果物農家や関連施設を訪問した。

 

台北農産第二市場に並ぶ台湾の果物
台北農産第二市場に並ぶ台湾の果物

 

屏東県九如郷の台湾香蕉研究所では、昨年から日本向けバナナの大規模栽培を始めている。中南部の25カ所の農園と協力し、同一品種を栽培、同一の肥料を使用するなど徹底した管理生産を実施。またバナナ1房ごとにビニールで覆い、その上には更に大きな紙袋で全体を覆う。外観に傷が付かないようにし、色を均一にさせるための工夫だ。同研究所の趙治平所長は「今年のバナナは品質が格段に向上したと言う日本の輸入業者の声も聞いている」と語り、品質に胸を張る。

 

一房ごとにビニールに覆われたバナナ。更にこの上に紙袋を被せる。
一房ごとにビニールに覆われたバナナ。更にこの上に紙袋を被せる。
鮮やかなバナナ。
鮮やかなバナナ。
台湾香蕉研究所趙治平所長
台湾香蕉研究所趙治平所長

 

屏東県高樹区ではパイナップル栽培が盛ん。緑地生産合作社では2009年から日本市場に向けて輸出を開始。信頼できる契約農家からのパイナップルだけを輸出し、品質の向上に努めている。「パイナップル王子」こと郭智偉主任は「日台の農薬の規定はそれぞれ異なる。輸出する際には日本の規定に合った農家を探し、講習を行なった上で、規定遵守を徹底している」と話す。味だけではなく、安心安全のパイナップル作りに熱心に取り組んでいる。

 

半自動化されたパイナップルの分級(分別)作業。
半自動化されたパイナップルの分級(分別)作業。
専用コンテナに山積みにされたパイナップル。
専用コンテナに山積みにされたパイナップル。

 

高雄市大樹区の果樹産銷第27班で栽培されているのは玉荷包(ドラゴンライチ)。玉荷包はライチの中でも粒が大きく、種が小さいため、果肉がたっぷり。しかしながら栽培の難しさから、従来は黒葉ライチが多く栽培されていた。しかし近年の技術の向上で、南部を中心にその生産量を増やしている。欧憲龍班長は「直径33ミリ以上のものだけを出荷している」と言い、香り高く上品でありながらボリューム満点のライチが日本に向けて出荷されていた。

 

果樹産銷第27班欧憲龍班長
大樹区果樹産銷第27班欧憲龍班長
ライチの分別作業の様子。一定の大きさに満たないライチは出荷されない仕組み。
ライチの分別作業の様子。一定の大きさに満たないライチは出荷されない仕組み。
熟した状態でも鮮やかな緑色が特徴の玉荷包(ドラゴンライチ)。
熟した状態でも鮮やかな緑色が残るのが特徴の玉荷包(ドラゴンライチ)。

 

また、フルーツの品種改良も積極的に行なわれている。特に高雄市小港にある果物輸出業者フォルモサ物産が手がけるのは「夏雪」と呼ばれる新種のマンゴー。赤い外観が特徴の愛文マンゴー(アップルマンゴー)と比べ、夏雪は鮮やかな黄色の外観が目を引く。最も特徴的なのは繊維質を感じさせない、柔らかな舌触りで、口の中でとろけるほど。日本への輸出は解禁されておらず、台湾国内での流通量も少ないが、頼黙亜総経理は今後は生産量を増やしていきたいと意気込む。

 

左が新種マンゴーの「夏雪」。右は日本にも輸出されている「愛文マンゴー」。
新種マンゴーの「夏雪」(左)と日本にも輸出されている「愛文マンゴー」。
フォルモサ物産頼黙亜総経理
フォルモサ物産頼黙亜総経理

 

このほか日本ではまだ馴染みが薄いパパイヤも、今後積極的に日本輸出をしたいフルーツの一つ。しっとりとした果肉に独特の風味と甘さが特徴。屏東県高樹郷果樹産銷第65班の楊乾徳班長は農地の施設を改良し、生産効率を上げることで安定供給に取り組むとしている。

 

しっとりとした果肉が特徴のパパイヤ。
しっとりとした果肉が特徴のパパイヤ。
高樹郷果樹産銷第65班楊乾徳班長。
高樹郷果樹産銷第65班楊乾徳班長。

 

今年の台湾フルーツは「なかなかの出来」と言い、台風の影響で深刻な被害が出た昨年と比較すると実りも良く、味もしっかりしていると言う。台湾が世界に誇るフルーツの背景には、美味しい果物を消費者に届けたいと言う果物農家の絶え間ない努力とフルーツへの愛情が込められている。台湾のフルーツ収穫は6月初旬に最盛期を迎え、海を越えて世界各国の食卓にあがる事になる。