台湾日本人会(以下:日本人会)と台北市日本工商会(以下:工商会)は公益財団法人交流協会と共に、台湾の日本人社会を支える三つの基礎として位置づけられている組織である。今回は両会の総幹事である山本幸男さんにインタビューし、両会の取り組みと、山本さんご自身の台湾に対する思いを伺った。
日本人会は1961年の設立。2011年には50周年の節目を迎えた。その直前の2010年頃、運営に関して「くたびれた様な状況もあった」と言う。そこで節目を迎えるにあたって「もう少し活性化しなきゃいけないんじゃないか」と考え、様々な改革に取り組んできた。2011年と2013年に会則が大幅に変更となり、「開かれた日本人会」、「役に立つ日本人会」をモットーに、改革を具体化させている。2011年からは準会員制度を導入。台湾人でも、日本と縁がある人なら入会できるようになった。
また、事務局自体の強化にも取り組んでいる。2011年の東日本大震災の際、週明けの3月15日には義捐金活動を行ない、約1億円の義捐金集めに貢献した。「それ以前はそう言う事があってもなかなか体制が取れなかった」と言う。改革の成果だ。また、2011年に開催された「NHKのど自慢イン台湾」や、今年4月に行われた「宝塚歌劇団台湾公演」でも開催において支援、協力をしたと言う。また、「日本社会と関係の深い団体との連携を深めている」と話し、積極的な日台交流の促進も行なっている。
一方、工商会は2011年に設立40周年を迎えた。工商会では2009年から毎年秋に中華民国政府に対し個別企業の改善要望事項と政策提言を加えた「白書」を提出している。「日系企業が抱えるビジネス上の課題やトラブルなどをまとめ、台湾で仕事をする上で、もっとやりやすいように」と言う願いから作成された要望書だ。この白書は台湾の政府も重要視していると言う。「(最近では)日本とヨーロッパ、アメリカの工商会議所から上がってくる要望事項に関してはちゃんとフォローするように、と言うことが(台湾の)政府の各部署、末端まで浸透しているようだ」と話し、関係部署から個別の回答が返ってくると言う。
日本人会の会員数は約3000人。商工会には約430社が加入している。いずれも東日本大震災以降は増加傾向であると言う。山本さんは台湾へ進出する日系企業が多くなっていることに加え、「海外における生活のうえで、日本人会のようなネットワークに入ったほうがよいのではないかという気持ちが皆さんの中に浸透してきたのではないか」と分析する。ネットワークに所属することは「自分および家族を守っていく上で必要なのではないかと考えている」とも。
山本さんと台湾との関わりは長い。1980年代から出張で度々訪台。ただ仕事の関係上、中国に滞在することが多く、「そんなに詳しくはなかった」と謙遜する。1990年代に家族と台北へ旅行に来た際は「のんびりとした、ローカルな街だな」と思ったと言う。また、出張の際に出くわしたエピソードとして、高級腕時計の偽物を売る男性が会社の中に入ってきていたことを挙げ、「そういう時代でしたね」と笑って懐かしむ。
2008年12月から現職。しかし、「恐らく多くの日本人もそうだと思うが、台湾のことを良く知らなかったと痛感した」と話す。しかし「日台交流を深めていく」ことが日本人会改革の柱のひとつだ。「台湾の人が日本人会に入会できるようになっても、受け皿がちゃんとまだできていないから、実際に日本と台湾の人が交流できるような場をもう少しやっていかなければ」と、今後も引き続き交流事業に取り組んでいくことを語った。