台大出版中心は7月2日、誠品書店台大店で日本統治時代の台湾経済に関する座談会を開催した。スコールが降る足場の悪い中での開催となったが、台湾人自身も教わることの少ない自国の歴史を知る機会とあって、会場には40人以上の聴衆がつめかけた。
「植民地経済の服従と発展 日本統治時代台湾を核心とする考察」と題された今回の座談会は、近年日本人学者によって研究された日本統治時代の経済に関する論文の翻訳本出版を記念して行なわれたもの。ゲストとして国立政治大学台湾史研究所薛化元所長と李為楨助理教授が招かれた。台湾では戦後長らく、学校教育で台湾の歴史が教えられることは少なく、台湾の歴史を知らないと言う台湾人も多い。しかしその一方で、日本では近年になり東アジア研究が盛んに行なわれており、日本統治時代の台湾経済に関する研究成果も少なくない。
翻訳本の出版に携わった薛所長は「台湾で行なわれていない研究が、日本で活発に討論されていることも多い。(翻訳本の出版は)意義のあること」と語る。台湾では多くの人が戦前の日本と台湾の経済関係について「農業台湾、工業日本」と言う役割分担がされていたと認識している。しかし実際には1930年代以降に台湾の農業と工業はどちらも急成長を遂げた実情はあまり知られていない。「台湾にとって重要なことでも、研究論文となると少ないこともある。そんな時に日本人の学者はどう見ているのか知ることができる」と、翻訳本出版の必要性を強調する。
会場には学生から年配の方まで、幅広い年齢層の人々が集まった。シンガポールから研究のため訪台していたと言うシンガポール国立大学の教授は「日本は後発の植民者。他国の植民制度を吸収し、(日本が)良いと判断したことを台湾に施した。日本植民地政策の最大の特色だと思う」と、世界的に見ても特徴的で興味深いと語った。また、台湾人からは専門的な質問が相次ぎ、関心の高さを伺わせた。
参加者の中には、引き続き日本人学者の論文を翻訳出版してほしいと希望する人もいた。薛所長は今回の翻訳本の出版によって、台湾経済への理解を深め、台湾人の歴史的認識に一石を投じることになればと期待している。