在日台湾同郷会、在日台湾婦女会、日本台湾医師連合が主催する「台湾大学医学院柯文哲教授来日講演会」が12月1日、都内で開催された。これは在日台湾同郷会忘年懇親会の一環として企画されたもので、演題は「台湾医療人権から見た台湾人道事情及び社会正義」、司会は薛格芳氏(在日台湾同郷会事務局)、通訳は久留米大学張国興教授が務めた。
初めに柯文哲教授が用意した30分のDVD映像(台湾のテレビニュースのダイジェスト)が流された。内容は馬英九総統と王金平立法院長との争い、8月3日の洪仲丘事件の真相究明を訴える抗議行動(主催者発表25万人)の様子など。
講演に先立ち、在日台湾婦女会張信恵会長が挨拶し、今見た映像(洪仲丘事件)は小説でも映画でもありません。台湾の現実ですと述べた上で、「普通は若い兵隊は戦場で国のために戦って命を亡くすもの。でも上司のいじめで命を亡くした。これは突発事件ではありません」と憤りを露わにした。
続いて、台湾の著名な医師であり、人権擁護の立場から様々な社会問題に警鐘を鳴らし続ける柯文哲教授が登壇した。
柯教授は、台湾400年の歴史(統治者の変遷)、台湾の現代医学の紹介、台湾・宜蘭出身の社会運動家蒋渭水氏の紹介(台湾文化協会、台湾民報、台湾民衆党、台湾工友総連盟設立と背景)、陳水扁前総統問題の紹介(不公正な裁判・拘留の現況)、台湾に民主政治はあるか(二大政党制・選挙)、台湾を救うには、といったテーマで熱弁をふるい、満員の会場から拍手や歓声が巻き起こっていた。
「台湾は地政学的に周囲を大きな国に囲まれ常に外から耐えきれないチャレンジを受ける結果、いうことを聞く順民になってしまう」「自分の心の拠り所を相手に売り渡したり、何も知らない、知ろうともしない、あえて知ることもしないのは、台湾は政権が代わると前の統治事情を否認しないといけないから」「台湾の政治は政治屋のものになっていて、4年に1回の選挙だけは民主主義。それ以外は何もない」といった辛口批評の一方で、柯教授は、先人、蒋渭水氏の台湾文化協会の設立を高く評価し、「僕は蒋渭水さんがやっていないことをやろうとしているだけです」と述べた。
また、洪仲丘事件について「台湾史上、政党が動員しないで台湾人が25万人も集まった最初のケース。この台湾における一般の市民運動は台湾の希望でしょう。僕は台湾のジャスミン革命と呼んでいる。我々の目標としては、正しいことを正しいと、間違っていることは間違っていると言える社会を樹立すること。欠けているのはジャスティス」と力を込めていた。
閉会の挨拶は、日本台湾医師連合の中原昴会長が務めた。