台北駐日経済文化代表処及び台湾証券取引所は、共催で12月11日午後、都内にて「台湾証券取引所への上場」をテーマにセミナーを開催(協力は野村総合研究所)、予想を超えて約200人の関係者が集った。
台湾証券取引所には現在28社の海外企業が上場、うち5社は直近4年でIPO(新規公開)した純外資(100%出資)企業だが、台湾は資本市場の開放が2008年と遅かったため、純日本企業の上場実績はなかった。こうしたなか、台湾証券取引所は、対外開放に方向転換するとともに積極的に海外企業の上場を受け入れる環境整備に努めてきた。
冒頭の挨拶に立った台北駐日経済文化代表処沈斯淳代表は、昨今の日台の政府と民間の緊密な関係を災害、野球、旅行往来人数、青少年交流(修学旅行)、各種経済・貿易協定締結などを例に挙げながら「今日は李述徳会長が率いる台湾証券取引所の環境について皆様にご紹介させていただきます。緊密な台日関係を背景に必ず台湾をパートナーとして選んでいただけるのではないかと思います。今後、さらなる環境整備により双方の産業界が緊密な協業・協力関係を打ち立てることができるようお祈りしています」と述べた。
続いて李述徳会長は、経済自由化、グローバル化で国内需要は低迷し、逆に各国間の経済のリンクは強まっているとし、「本日、台湾からおいでになった関係者の皆さん、弁護士・会計士の皆さん、つまり私たちは、皆様とともに資金調達を実現し、活用し、人材を活用し、市場を開拓し、その先で中国進出を果たし、さらに企業価値を高める。こうした企業戦略の実現のために、ここにやって参りました」と呼びかけた。
この後、台湾証券取引所上市二部杜惠娟部長が「アジア展開へ向けた台湾資本市場の活用」と題し、野村総合研究所目片芽輝(台湾)ディレクターが「日本企業にとっての台湾上場及び台湾証券取引市場のご紹介」と題し、講演を行った。
特に、前者、杜惠娟部長が紹介した来年1月14日上場予定のインターネット中古車流通サービス・株式会社オートサーバーの事例に注目が集まった。同社は100%日本資本初のIPO事例。
休憩をはさんで「日本企業の台湾上場事例に関する公開討論」が行われ、野村総合研究所(台湾)有限公司張正武社長(司会)、元大証券曾馨慧バイスプレジデント、Jones Day法律事務所劉中平弁護士、Deloitte&Touche会計事務所張瑞娜会計士、台湾証券取引所上市二部杜惠娟部長が参加した。専門領域の立場からの上場に向けたアドバイスに参加者は熱心に聞き入っていた。
午後5時から会場を替えて、記者会見が開かれた。李述徳会長、杜惠娟部長、陳麗卿エグゼクティブバイスプレジデント、上一二部卓碧華組長、張正武社長が参加した。
李述徳会長は「私たちの役割は大きなトレンドのなかで日本企業のお手伝いをさせていただき、台湾でIPOを上場することで中国進出の足掛かりにしていただければ」と述べた。一方、杜惠娟部長は、台湾での上場メリットとして、技術交流や人材交流以外に低コストの資金調達、PER・PBR・EPSの高さ、活発な取引(流動性や回転率が高い)などを挙げ、「2008年の開放以来多くの外国企業の上場を実現してきました。そんななか、しいて言えば台湾でのIPO上場は日本の中小企業の皆さんにとって最適な資金調達ルートのひとつではないかと思います」と力を込めた。
日本企業への働きかけは継続して続けられており、成果が出るのはむしろこれからという印象だった。