画家の登竜門とされる「公募展」の源流「文展・帝展・新文展」などいわゆる「官展」は、東京・台北・ソウル・長春にてこれまでに広く開催されている。この4つの官展を一挙に紹介する展示会、「東京・ソウル・台北・長春―官展にみる―それぞれの近代美術」展が5月14日より府中市美術館で開催された (会期~6月8日)。4つの官展をまとめて紹介する展示会はアジア初。
同展の関連企画として5月31日、女優であり木版画家でもあるジュディ・オング倩玉さんによるミニトークショーと国立台湾美術館典藏管理組組長の薛燕玲さんによる講演会が開催された。同館ロビーで行われたジュディ・オング倩玉さんのトークショーには約150人もの聴衆が集まり、木版画家と芸能活動、そして双方の人生についてや同展の評論などが語られた。
トークショーに先立ち、同展を観覧したジュディさんは「この展覧会はそれぞれの国の画家が互いの文化を異国の目で描いた絵画の展覧会である。異国への興味を持ち、自分の目で見て、その文化を知ろうという気持ちで描く。これこそが本当の文化交流だと感じた。それを紹介しているこの展覧会は素晴らしい」と述べた。
また、薛燕玲さんの講演会も会場は台湾美術に興味を持つ聴衆で満席。20世紀前半の台湾美術について、そして同展にも出展している作品の歴史的背景などを講演し、聴衆の理解を深めた。薛さんは講演後「この度はこの講演会のために来日した。戦後の日台の美術交流は多くなかった。今回講演会では戦後当時から続く4つの国の文化交流の状況を紹介し、さらに交流を進めていきたいという気持ちで講演させていただいた」と述べた。
府中市美術館学芸係長の志賀秀孝さんは、「今まで1920年から1940年の美術については全くと言っていいほど触れられてこなかったが、この時代の美術は非常に大切な時間であるため、見直す必要があると感じ企画した。またタイトルの“それぞれ”という言葉には各々が分かち合い理解し合い楽しみあうという意味を込めて命名させていただいた。他の国と比べると台北人画家の作品には、他国にはない突き抜けた明るさ、さわやかさ、強さを感じることが出来る」と同展開催の意義を話した。