2016年1月に控えた台湾次期総統選挙。どうやら女同士の戦いとなりそうだ。
台湾の与党・中国国民党は6月14日、党内で唯一次期総統選に立候補していた立法院・洪秀柱副院長の世論調査支持率が46.2%となり、候補指名の条件である30%を超えたと発表した。国民党は党の規定で、一般市民対象の世論調査での支持率30%以上の条件を満たすことを候補者資格の条件としており、洪副院長は見事これを突破した。今後は党幹部会合での審査を経て、7月19日の党大会で正式に候補者に擁立されるとみられる。洪副院長は記者会見で「一歩一歩前に進んでいく」と決意を示した。
しかし党内では、洪副院長は戦後台湾に移住した外省人の家庭出身で中国大陸との統一志向が強く、知名度もいまひとつとの声もあり、中間票の取り込みが難しいとされている。このため党内の公認候補選びは、党大会での正式決定まで流動性をはらむが、洪副院長が辞退しない限り公認候補に指名される可能性は極めて高いとの見方が強い。
もし洪副院長が公認候補に指名された場合、野党・民主進歩党の公認候補、蔡英文主席と女性同士の戦いとなり、史上初の女性総統が誕生する公算が大きい。これについて洪副院長は6月14日、「女性2人の選挙戦が社会に新しい印象をもたらすことを望む」と意欲を示した。
蔡英文、次期総統選へ向け加速する勢い
一方で昨年末の統一地方選で圧勝し、4月15日の段階で早々に次期総統選の公認候補に正式決定した蔡主席はさらなる勢いをみせている。蔡主席は5月末から6月初旬にかけて訪米し、次期総統への意欲を世界にもアピール。台湾帰国時の台北郊外の空港で「米国での会談内容は豊富で多元的だった。米国側の善意と協力を感じた」と述べ、さらに「予定していた目標は達成できた」と成果を強調した。蔡主席は、米政府高官との会談で対中政策の「現状維持」を強調した模様。独立志向の強い民進党に政権が復権すれば、「中台関係が不安定化するかもしれない」という米国の懸念を払拭することが目的とみられる。これを米側も厚遇で応じたという。
さらに、訪米中かつて台湾の総統候補では1度もなかったとされる国務省ビルに招かれるなど、民進党の予想を超えるワシントンから歓待されるなどの厚遇を受けた。
なお、訪米について洪副院長は、6月26日に行われた議会後の記者会見で、「アメリカは重要視している国だが、私は選挙のスタートが少し遅かったため、現段階で訪米する予定は決まっていない。現在、どのような方法での訪問が良いのか模索中だ。個人で行くかどうかも分からない」と述べるなど、訪米の可能性を示唆した。
総統選挙まで残り半年あまりとなるなか、両党の女性候補者が今後どのような戦略で選挙戦を繰り広げるのか、世論からの注目も集まっている。