福岡で台湾語を学ぶ人の「台湾料理教室」

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福岡市の関連施設の「あいれふ」で9月5日、「福岡の留学生から学ぶ外国語教室(台湾語)」の授業の一環としての「台湾料理教室」が開かれた。参加した生徒は18人。女性13人男性5人の構成で、調理テーブルの広さの関係から班を4つ分け、各班それぞれが4種類の料理を作る試みだ。

「台湾料理教室」
4つの班に分かれて料理開始

 

4種類のメニューは蛋餅(ダンピン)、魯肉飯(ルーローハン)、番茄炒蛋(とろとろトマトと卵炒め)、珍珠奶茶(タピオカミルクティー)。生徒の中には、食べ慣れた人もいたが、一方で名前も味も知らない初心者も。必要な調味料や乾燥食品は2~3日前に専門店で、また、肉や野菜は朝早くから開いている近所のスーパーで当日買い揃えた。お米は農家の生徒が持参した自家消費用の特上品を持ちこんだ。

材料の使い方や調理の手順を説明したのは、福岡大学の留学生で講師の陳勝仁さん。「普段は料理を作らないけれど・・・」。少しおぼつかないところが笑みを誘う。

講師の陳勝仁さん(右)が
講師の陳勝仁さん(右)が手順説明

そこを台湾に何度もグルメ旅行に出かけ、日ごろ台湾料理店を食べ歩いて舌が肥えている女性陣が手助けしてリカバー。和気あいあいと調理が進んでいく。合間には「陳先生、ちょっと見て下さ~い!」という少しトーンの高い声があり、隣の調理テーブルを横目で見て「あっちの方が進んでいるみたいよ。急がなくちゃ!」などの声も聞こえる。人数で圧倒されているせいか、男性陣の声はあまり聞こえない。男子はニコニコしながら女性陣の指示で材料を揃えたり、使い終わった調理器具を洗ったり、途中の味見をする役回りの様だ。

その後調理も順調に進み、まず仕上った蛋餅がテーブルに並べられた。蛋餅はハムや野菜などを乗せた薄焼き卵をクレープ状の粉生地で包み込んで作られている様だが、逆に生地を具入り卵で巻いている班もある。しかし、どちらにしても落ち着いたもので、「まあ、美味しそうに仕上がったわ!」と、澄まし顔である。

蛋餅(左下)と魯肉飯
蛋餅(左下)と魯肉飯

 

次いで番茄炒蛋が甘い香りを漂わせる。「台湾料理の優しさ、マイルドさを一番良く代表しているのがこの料理なんだ」と言っている声も聞こえる。豚肉と椎茸を甘辛く炒め、香ばしい匂いを広げる具材をご飯の上に乗せて完成するのが魯肉飯だ。並べられた丼鉢は、お店で食べるような雰囲気を醸し出す。醤油と砂糖のさじ加減によって辛めになったグループも、甘めに仕上がったグループもあり、色も味も香りも独自性があった。

台湾の家庭料理、番茄炒蛋
台湾の家庭料理、番茄炒蛋

最後に熱湯の鍋からボールに移し、冷やしておいたタピオカをオタマしゃもじで掬ってミルクティーに入れると珍珠奶茶の完成だ。元は茶色いタピオカだが、熱いお湯の中で真っ黒になるところを初めて見た人も多かったようだ。

珍珠奶茶に入れるタピオカも手作り
珍珠奶茶に入れるタピオカも手作り

その後、4種類全部の料理が仕上がったら待望の試食会が始まった。すでに2時間経過しているため、お腹が空腹信号を出している人も。陳先生の「皆さんご苦労様でした。じゃあ食べましょう」の挨拶とともに、一斉に「いただきます!」の声が上がり、今度はお箸がお椀やお皿とぶつかる音がしばらく続く。

出来上がり!
出来上がり!

少し胃袋がふくれたところで、味の自慢や作る時の苦労話があちこちで聞こえ始める。作るときも楽しいが、大勢でおしゃべりをしながら食べるのはもっと楽しい。「台北の有名ホテルで食べた蛋餅と遜色ない仕上がりになったわね」。「この魯肉飯はいける!お米が美味しいせいかな?」。「デザートにふわふわ氷にマンゴーをいっぱい乗せた掻き氷があるともっと良かったわね!」などのほか、タピオカの原材料についての「講義」まで、様々な話題がグループの中だけでなく、テーブルを飛び越えて交わされる。さらに先月、5人組バンド・Mayday(五月天)の公演を見に東京まで行ったという話が出ると「エッあなたも行ったの!私も行っていたのに会わなかったわね」との話題に。参加者全員が台湾と台湾人と台湾料理が大好きなのだ。

参加メンバーは、5月から始まった「福岡よかトピア国際交流財団」主催の台湾語(びんなん語)教室の20代から70代までの生徒。教室に入ったきっかけは、「台湾の音楽やドラマ、アイドルが好きだから」、「最近台湾の人と知り合ったので」、「台湾旅行で親切にしてもらい、興味を持つようになったため」、「歴史や文化を含めて台湾の事をもっと知りたいので」、「日常生活で台湾語が使われる中南部を訪れてみたいので」、「台湾とビジネスする可能性が出てきたため」など様々。ただ共通点は、台湾の人と台湾語でコミュニケーションの修得を目指すのが目的という事だ。

普段の授業の様子
普段の授業の様子

アジアのゲートウェイを目指す福岡市では、国際交流に必要不可欠な「言葉の習得」を通じて市民が国際理解・交流を深めるために、平成3年より「留学生から学ぶ外国語教室」を開始している。この活動は、民間交流のきっかけ作りを目指したもので、スタート時は中国語、広東語、韓国語、インドネシア語、マレー語、スペイン語の6言語だったが、平成27年度には17言語まで増えている。累計の受講者数は延べ9,621人に達し、特に台湾語(びんなん語)は平成16年度の開講だが、現在人気の言語教科項目になっている。

現在、福岡大学の商学部貿易学科で学ぶ陳先生
現在、福岡大学の商学部貿易学科で学ぶ陳先生

講師の陳勝仁さんは、台湾・屏東の出身で高雄の文藻外語学院で日本語を学び、兵役(海洋警察)を終えた後、2010年に日本に来たという。来日最初は東京や大阪で働いたが、2014年に福岡大学に入学し、現在商学部貿易学科で学んでいる。卒業後は日本で就職し、日本の女性と家庭を持ちたいと言う。クラブ活動はソフトボール部に所属し、合宿や対外試合にも積極的に参加。勉強、部活、アルバイトを両立しながら、週に1度とはいえ、準備に時間のかかる台湾語教室の講師は大変な事。しかし当人はいつも笑顔を絶やさず、弱音を吐くことがない。料理教室の食事中も、「センセーイ、こっちの蛋餅も食べて下さーい」、「魯肉飯をお代わりしませんか?」という声があちこちからあり、その都度テーブルを移動する忙しさ。

ワイワイ言いながら食べているうちに作った料理も殆ど無くなり、満腹感と達成感に浸っていたが、その余韻が残るなかで食器を洗い、調理器具の点検や清掃の後、料理教室は無事終了となった。台湾料理のグルメを自称する人にとっても、初めて台湾料理を体験した人にとっても、お腹も心も満たされた一日になったようだ。

 

 

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