台湾最大手銀行である台湾銀行(李紀珠理事長、以下:台銀)と、日本のみずほ銀行(林信秀頭取、以下:みずほ銀)は10月20日、みずほ本社(東京都千代田区大手町)にて業務協力覚書を締結した。同覚書は両行の銀行業務を中心とした幅広い分野での更なる協力を目的としたもの。
以前より両行は、日本円と台湾ドルの資金面での相互支援、シンジケートローン共同組成や日系企業が台湾へ進出する際のサポートなどで協力していたが、昨今の台湾人訪日客の増加を背景とした不動産や金融商品への対日投資需要の高まりや、日本と台湾の双方が抱える高齢化などの社会経済情勢の変化を捉え、このたび改めて同覚書の締結を計った。
日本の対台湾窓口機関である交流協会の監事も務める林頭取は同覚書締結によるビジネス拡大について、「台湾は人口は少ないが日本にとって魅力的なマーケットである。台湾に投資し、台湾をゲートウェイとして中国大陸への進出を展開していくことが出来るだろう」と述べたほか、「日本がTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に加入したことで、今後、日本企業と台湾企業の提携が進めば、台湾側にとっては日本経由でTPPの環太平洋経済圏にリーチできる」とお互いの利点を説明し、同覚書締結は相互交流の橋渡しとして機能するとした。
また、李理事長は「現在、日台双方は同じような社会問題に直面し、同じようなビジネスチャンスにも直面しているといえる」と定義し、問題点として低金利の時代であること、各国内市場の利益獲得率が低いことを挙げ、「(日台は)共に海外利益を獲得したいという目的をもっている」と話した。また、各国内での問題としては少子高齢化に言及し、同覚書にはそれを受けた商品開発など、具体的な将来の業務提携内容を盛り込んでいるとした。
さらに、みずほ銀の実際の調査結果で“日本企業が台湾の企業と共に中国大陸へ進出した場合、日本単体で進出するより成功率が10%高まる”という結果が出されていることを発表し、台湾側との提携の意義を強調した。
なお、李理事長は日台の銀行交流の歴史にも言及。日本勧業銀行が日本統治時代の1933(昭和8)年に台北支店を、台銀は1899(明治32)年に神戸支店を設立したことや、台銀本社は日本統治時代に作られた歴史ある建物で日本との関わりが深いことを述べ、みずほの役員らに対し「皆さんにも台銀の本社を見て頂きたい。是非近いうちに台湾銀行にお越しください」と次なる交流の機会を促した。
積極的な海外進出を試みる台湾金融業界
このたび台湾の金融関係者らが日本を訪れた理由はもう1つあった。台湾銀行のとみずほ銀行の覚書が締結された前日19日、全国銀行協会(佐藤康博会長、兼みずほフィナンシャルグループ執行役社長)と中華民国銀行公会(李紀珠会長、兼台湾銀行理事長)は、両協会間の協力関係に関する覚書を締結した。同覚書の主な内容は相手協会の活動へのサポートや相互の活動に関する情報交換という事項であり、両協会の協力関係の構築・強化につながるもので、金融業の発展と金融環境の健全化促進を目指すもの。今後、双方の会がお互いの銀行業の助け合い強化と交流を行い、さらに深化した協力の機会を広げて行く構えだ。
李会長によると両協会間の同覚書締結にあたっては、今年8月、台湾銀行の要人らを引き連れ日本視察を行った際に日本全国銀行業協会の高木伸副会長と交流し、同覚書締結達成への共通の認識を確認したという。
なお、台銀は今年の7月15日に、東京都内で三菱東京UFJ銀行との業務提携に関する覚書も締結しており、プロジェクトファイナンス、協調融資、貿易金融、人材育成などの分野で協力や交流を深め、台湾に進出する日本企業や海外の台湾企業に対するサービスを拡充していくとしていた。
このように、台銀は李理事長就任以来、台湾金融業界の発展のため、日本金融業界との交流促進のほかにもイギリス銀行、香港銀行業協会、大陸銀行業協会、コーカサス地方及び中東地区の銀行業協会と交流を深めてきた。李理事長は、「今後も台湾金融業界は積極的に海外進出したいと思っている」とさらなる意欲をみせており、台湾の銀行業者が運用できるような「海外各国のビッグデータ」を活用した金融サービスの設立にも取り組んでいる。