横浜の原鉄道模型博物館では2016年1月16日より同3月17日まで、「台湾の鉄道展」を開催している。
同展では、世界的に著名な鉄道模型製作及び収集家の故・原信太郎さんが1968年に阿里山森林鉄道を16mmカメラで撮影した貴重な鉄道映像を初めて公開しているほか、台湾各地の鉄道の写真及び資料、シェイ式蒸気の模型などを展示している。同博物館で他国の鉄道特別展示を行うのはこれが初めて。
開幕初日の16日には、オープニングセレモニーが開催され、台北駐日経済文化代表処横浜分処の粘信士処長や横浜市文化観光局の中山こずゑ局長、横浜華僑総会の羅鴻健会長らが来賓として出席し、原信太郎さんの息子である同館の原建人副館長と共に開幕を祝したテープカットを行ったほか、展示会及び鉄道映像を観賞し台湾鉄道への理解を深めた。その他、同セレモニーには多くの横浜地区における台湾関係者らが招待された。なお、原副館長の挨拶の通訳は中華学校を卒業している原館長の三女が務め、長女と次女もテープカットの補佐としてサポートした。
原副館長は挨拶で、「父、原信太郎は小学校の頃から、日本国内に留まらず海外の鉄道雑誌を熟読し、自由に旅行が出来るようになった頃からは世界中を旅して世界の鉄道を勉強し、模型にしてきた」と回顧したうえで、「このたび父の愛した台湾の鉄道をテーマに企画展を開催することになったが、父は生前何度も台湾に足を運んでいる。その際に撮影した台湾鉄道の貴重な映像には、かつての台湾の姿が明確に残っているので是非ご覧頂きたい。同展が日本の方のみならず、台湾の方の心に残るものになればと思ってやまない」と述べた。
このたび上映されているカラーで残された阿里山森林鉄道の映像や、台東線などの写真は、台湾国内でも大変貴重なもの。原副館長によると、当時の鉄道は、大砲などの兵器を運ぶ事もあったため軍備の1つとして考えられており、台湾国内でも写真撮影が堅く禁じられている鉄道も存在したという。それでもお構いなしで夢中になって鉄道の記録に務めた原信太郎さんは、当時、台東線の写真を撮った際にスパイ容疑で捕まり1日刑務所に入った経験もある。
それほどまでして鉄道の記録を残したかった原信太郎さんについて、当時一緒に訪台し、阿里山森林鉄道に乗合ったという鉄道著作家の松本謙一さんは「彼は16mmカメラとスチールカメラを抱えて朝から晩まで四六時中駆け回っており、非常に精力的だった」と話していた。同博物館では1月31日に多目的ルームで松本さんによる鉄道映像解説イベントが行われる(当日先着制)
「鉄道の世界は国境のない平和な世界である、とよく父から聞いていた。父の想いを台湾のみならず、世界中に向けて謳っていきたい」(原副館長)。