東儀秀樹×台湾若手アーティスト 日台を音楽で繋ぐ「東儀秀樹 with RYU」デビュー

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東儀秀樹withRYUが世界デビュー
東儀秀樹withRYUが世界デビュー

雅楽の世界を変え続けてきた雅楽師の東儀秀樹さんが自らオーディションを行い、選出した台湾の若手伝統楽器奏者6人と共に結成したユニット「東儀秀樹 with RYU」は3月19日、東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホールで世界デビュー公演を開催した。

雅楽やアジアの伝統楽器が持つ神聖な音色はもとより、伝統楽器のイメージを払拭するような迫力のあるパフォーマンスまで、東儀さんとRYUのメンバーが織り成した見事な音楽のコラボレーションに、観客はスタンディングオーベーションで大喝采。「東儀秀樹 with RYU」は華々しいデビューを飾った。

このほどの公演は2回公演で開催され、東儀さんが作曲した「蒼き海の道」、「春色彩華」、「Pure Smile」のほか、ホルスト「惑星」より「Jupiter」、オペラ「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」、「リベルタンゴ」など、見ていて飽きの来ないバラエティ豊かな全15曲を演奏。その後、鳴り止まぬ拍手に応え、日本の曲「浜辺の歌」とSMAPの代表曲でもある「夜空ノムコウ」のアンコール2曲を演奏した。

東儀さんは終演後、台湾新聞の取材に対し、「このコラボレーションはスタートしたばかりの事で、最初のコンサートはものすごく大事。今日はとても良い形でスタート出来たと実感している」と述べたほか、「僕がコラボレーションの時に大事にしているのはその人の技術だけではなく、『この人魅力的だな、面白そうだな』といった人間が持つ内面の部分です。その雰囲気を大切に、メンバーを選出しました。講演後の握手会の時には、お客様からカッコいい、素敵という声だけでなく、『優しかった』という声を聞く事ができました。今日は、メンバーの少しシャイで優しい心がしっかりお客様に伝わったようです」と感想を語った。

舞台上で台湾への想いを語った東儀秀樹さん
舞台上で台湾への想いを語った東儀秀樹さん

RYUは二胡奏者のシン(董幸霖)とティーエス(羅常秦)、琵琶奏者のウィリー(黃暐貿)とヒロ(黃勝宏)、笛奏者のエディ(黃鈞)とライアン(任重)の全6人。ほぼ全員が名門、国立台湾芸術大出身で、年齢も24歳〜34歳と若手精鋭のメンバーだ。

台湾では個々で活躍し、経験も実力も申し分がない彼らだが、RYUとしては世界デビュー初日だったこともあり、登壇直後はすこし緊張した面持ちが見て取れたが、演奏が始まると表情が一変。見事なテクニックを披露し、観客は吸い込まれるように演奏に耳を傾けていた。特に、ティーエスがソロで演奏したチャールダッシュでは、繊細で確実なテクニックに魅せられた観客から溢れんばかりの拍手と喝采が起こった。演奏後にはメンバー全員が「今日はとても楽しかった。日本のお客さんの熱狂はすごいですね」と口を揃えてコメントしていたほか、ティーエスは「今後の目標は東儀さんと同じ位素晴らしいアーティストになることです」と目標を語った。

「東儀秀樹 with RYU」の演奏を聴いた在日台湾人60代女性は、「月に1、2回はコンサートを聴きにいっていますが、個々最近で一番良いコンサートでした。まさか母国台湾にこのような人材が居たとは驚きです。是非台湾でも一人一人ではなくこのグループでコンサートを行って、台湾の人たちにも聴いて頂きたいです」と話していた。

東儀さんもインタビューの際、「まだ予定は定まっていませんが、今後は台湾でもこのメンバーで、台北、高雄、台南などを廻るお披露目コンサートミニツアーをやりたいと思っています」とコメント。今後の活動にも引き続き注目していきたい。

 

 

ユニット結成は東儀さんの台湾への想いから

「東儀秀樹 with RYU」はもともと、2014年に台湾観光親善大使に任命された東儀さんが、「せっかく任命されたのだから音楽家としての立場を生かし、何かしらの形で動きたい」という想いから結成が発案された。

同大使任命にあたっては、東儀さんが2011年3月の東日本大震災の際に莫大な義援金をすぐさま日本に送ってくれた台湾に対し、政府側が充分なお礼をしていなかった事を遺憾に想ったことから、「民間として出来る事を」という気持ちに至り、2013年11月に「謝謝臺湾!」を合言葉に約60台のクラッシックッカーを台湾に運び入れて、台湾を1周しながら各地で感謝を伝え続けるという「ラリーニッポンin台湾」を行い、台湾に「ありがとう」を伝えて廻ったことがきっかけだという。このように台湾を想う東儀さんの強い気持ちを知った台湾政府は東儀さんを台湾観光親善大使に任命したのだ。

任命について東儀さんはステージ上で、「ラリーニッポンをやってみて、改めて台湾の人の優しさ、暖かみに触れました。台湾人に震災時の支援へのありがとうを伝えたら、『台湾までそのために来てくれてありがとう』と逆にありがとうをくれたのです。一気に台湾が大好きになり、その後の滞在でも、なんだか懐かしいところにいるような、優しいものに包まれている感覚になったのです。これは台湾の人からなるもので、とても素晴らしいと想い、その台湾の良さを推奨していたところ、台湾観光親善大使に任命されました」と説明したほか、「肩書きがあるだけでは気が済まなくて、音楽家として出来る事をしたかった。音楽は言葉を必要としないコミュニケーション手段であることを上手く結果に繋げられるのではないかと思ってユニット結成を試みました」と述べた。

自らの台湾観光親善大使の任命を、意味のある民間交流へと繋げた東儀さんに敬意を払いたい。

 

 

チャリティー握手会による募金、重要古跡の修復に

同コンサートでは終演後、ロビーで2月6日未明に発生した台湾南部地震で損壊した文化財の補修費などに役立ててもらうための救援金の募金が行われた。

これは、「日本から台湾の世界遺産登録を応援する会(以下:同会)」と「NPO法人 世界遺産コンサート」の2団体と、同NPOの音楽プロデューサーを務めている東儀さんが企画したもの。募金箱設置のほか、東儀さんとRYUのメンバーも自らチャリティー握手会を行い、観客からの募金を募った。

東儀さんとRYUのメンバーによるチャリティー握手会の様子
東儀さんとRYUのメンバーによるチャリティー握手会の様子

チャリティー握手会では、1階のロビーから2階の階段の上まで募金と握手会のための長蛇の列が出来たほか、握手会のついていない募金箱への募金もみるみるうちに集まり、同会の発表に寄ると、募金額は200万円を超えたという。

みるみるうちに募金が集まった
みるみるうちに募金が集まった

募金箱に募金した30代の女性は「私も昨年、ラリーニッポンに参加しまして、台湾人の皆様に大変お世話になったので、今回はただただ単純に台湾の皆さんの役に立ちたいと思い、募金させて頂きました」と話していた。

また、多勢の観客らが募金に協力したことに対しRYUのヒロは「日本の皆さん本当にありがとうございました。とても感動しました。僕らも台南の一刻も早い復興を祈っています」と謝意を述べた。

同会の辛正仁代表によると、集まった救援金は東儀さん自らの手で5月に台南市文化局に直接寄付されるという。また、東儀さんは5月8日に台南の烏山頭ダムで行われる八田輿一墓前式に参列し墓前で奉納演奏を行うほか、9日には台南の成功大学での講演及び演奏も行えるよう調整中だ。(2016/3/20)

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