南シナ海の領有権をめぐり、フィリピンが2013年1月に領有権を主張する中国を相手取り、「国際法違反だ」と訴え起こした国際仲裁手続きについて、常設仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)が7月12日、南シナ海をめぐる中国大陸の権利主張を認めない裁定を公表した。
判決では、台湾が実効支配する南沙(スプラトリー)諸島の太平島について、「島」ではなく「岩」だとしている事から、台湾の総統府は同日、「受け入れられない。中華民国(台湾)には法的拘束力がない」と主張した。
これを受け、海軍の康定級フリゲート「迪化艦」は予定よりも1日早い13日、南シナ海でパトロールを行うため、台湾南部・高雄の左営軍港を出発した。出発前には蔡英文総統も乗艦し、「今回の任務は、国益を守る台湾人民の決意を示すものだ」と乗組員らを激励したほか、仲裁裁の判決は「わが国の南シナ海の島嶼(とうしょ)とその関連海域に対する権利を大きく損なった」と指摘した。
また、馬英九前総統も16日、同島での主権や海洋権益の確保に向けた提言を蔡英文政権に対して行ったという。この提言で馬前総統は、できるだけ早く太平島に領海や排他的経済水域(EEZ)などを設定して公表するよう内政部に求めたほか、同島の滑走路の延長や、海外主要メディアへの意見広告掲載などを提案しているとしている。馬前総統は退任直前の同年1月に太平島を視察したほか、3月には海外メディアを同島に招待して「島」であることなどをアピールしていた。
蔡英文総統の対応としては、19日に行われた就任後初となる国家安全ハイレベル会議で、複雑な南シナ海問題に取り組むには、国際法に基づいた平和的解決のほか、多国・地域間協議に台湾を加える事、関係各方面には南シナ海における航行と飛行の自由を守る義務がある事、中華民国(台湾)は、争議の棚上げと資源の共同開発による紛争の解決を主張する事などの「4つの原則」を関係各方面が守る必要があるとの考えを示した。
さらに、蔡総統はこの4つの原則のもと、関係省庁に対し、漁業権の保護や護衛能力強化による漁業操業の安全の確保、関係各方面との対話や協議の推進、海外の学者による、南シナ海・南沙(スプラトリー)諸島の太平島での科学研究の実施、同島を人道支援センター、補給基地とするための国際組織との連携、海洋法分野での人材育成などを指示した。
なお、20日には台湾の与野党の立法委員8人が、太平島を訪問し、改めて領有を主張した。8人は空軍のC130輸送機で太平島を訪れ、約3時間滞在。島内を視察し、「岩ではなく、間違いなく島だ」と改めて強調した。