上野公園内の東京都美術館で11月26日から開催されている「第5回都美セレクショングループ展」に、台湾の芸術家3人がグループ「∞3(インフィニティー スリー)」を結成し、12月9日より同18日まで、同所のギャラリーBで平和や反核のメッセージが込められた展覧会「無・尽・藏」を開催している。
このほど参加している作家は、台湾出身の陶芸家・張義明さん、台湾在住の現代水墨藝術家・若岱さんと曽霆羽さんの3人。都美セレクショングループ展への海外からの出展は同台湾グループが初めてであり、張さんは「同展に外国人として初めて参加出来た事は、台湾人として誇りに思う。今後も藝術を通じて日本と台湾の架け橋となれるように頑張りたい」と意気込んだ。
同展は「生態・能源・永続」をテーマとし、3者がそれぞれ製作した作品を通して、自然の大切さや平和、反核のメッセージを伝えている。張さんがこのほど展示したのは、様々な形の真っ白な陶器で、平和・幸福・希望の光を表現した〈光の種〉シリーズと、赤と白、そして黒の陶器で蝶を模り、淡い虹色の輪の陶器とコラボレーションさせた<心郷花蝶>シリーズだ。「蝶の羽は台湾の梅の花や日本の桜や紅葉などをモチーフにデザインしており、羽には日本語のこんにちはや北京語の你好などの文字も刻んでいる。これは、日本と台湾の友好関係と、世界の平和を願う意味を込めている」(張さん)。張さんのアートは、一般的な“台の上に作品を展示する”という方法でなく、約1200個の陶器の蝶たちを壁に貼り付けたり、上から輪を吊るしたりと、空間全体をデザインするために作品を置いており、生命力が感じる事が出来る展示となっている。
また、曽霆羽さんは、原子力に疑問をうったえる作品を展示。ミニチュア「核廃棄物桶」から始まり、水墨を使用し描いた日常の生活風景を切り取った絵、最後に真っ黒に塗られたパネルが飾られており、原子力が日常生活に及ぼす事柄などを問題提起している。曽さんは、「2011年に日本の福島で発生した原子力事故をきっかけに、考えさせられる事があり、自分に出来る事という中で同作品の製作をした。原子力は必ずしも悪いものとはいえない。今では私達の電気も原子力で作られるなど、とても身近なものになっているのも事実だ。しかし、原子力の使用を続けていった時、将来はどうなってしまうのか…。日本だけでなく、台湾の問題ともなっている反核をテーマにした」と作品について語った。
また、同じく反核をテーマに赤と白と黒の水墨で力強い水墨画を展示した若岱さんは、「日本で発生した原子力事故だが、台湾でもこれはありえる事である。私は芸術家の立場で、反核を訴えて生きたい。大自然はとても大切で、絶対に守らなくてはならないものだ」と話した。
なお、初日の9日には、展示会場でオープニングセレモニーが行われ、作家3者のほか、台北駐日経済文化代表処の郭仲熙副代表、亜東親善協会の大江康弘会長らが出席し、テープカットや記念撮影を行い、同展の開幕を祝った。中には、台湾から駆けつけたという参観者もいた。(2016/12/09/23:57)