日台間のさらなる鉄道交流に向けて話合う会合「日台鉄道観光フォーラム」が6月2日、愛媛県西条市総合文化会館で開催された。同フォーラム開催は今回が初めてである。同フォーラムは「日台観光サミットin四国」に合わせて開催され、主催の日本旅行業協会の田川博巳会長のほか日本側からは、観光庁の本保芳明参与、国際関係課の川口和哉課長補佐、愛媛県の中村時広知事、四国旅客鉄道の泉雅文会長、京浜急行電鉄の石渡恒夫会長らが、台湾側からは台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表、台湾観光協会の葉菊蘭会長、台湾交通部観光局の周永暉局長、高速鉄路営業所の孫鴻文副所長ら合わせて約100人が出席し、今後の日台鉄道の交流に期待を示した。同フォーラムでは現在までの基調及び事例報告のほか、「更なる鉄道交流の拡大に向けて」をテーマに、東武トップツアーズの坂巻伸昭社長、江ノ島電鉄(以下:江ノ電)の天野泉社長、開発旅行社梁榮尭取締役、台湾鉄路管理局の鐘清達副局長がパネルディスカッションを行った。
同フォーラムは、台湾の鉄道が日本統治時代に建設された事により日本と台湾の鉄道はゆかりがあり、さらに日本と台湾の鉄道の発展プロセスが似ている事から、人材、技術、運営の交流を行い、ノウハウを共有する事で相互のレベルアップを図るとしている。また、近年ではスローライフが主流となり、鉄道に乗りながらゆっくり景色を見て楽しむなど、鉄道は単なる交通手段だけではなく、観光やコミュニケーションの一部となっており、相互のローカル電車の魅力を知る事で、観光客誘致に繋がっていくとの期待も込められている。
登壇者、日台観光の課題と期待に言及
基調報告で泉会長は、愛媛県松山駅と台湾松山駅は2013年10月友好駅協定の締結以来、日本人社員が台湾へ鉄道技術の研修などの交流を行ってきた事に触れ、今後も友好協定を持続し、交流事業を引き続き行っていくほか、さらなる鉄道交流に向け、ローカル線では「わざわざ乗ってもらう」をテーマに、アンパンマンなど個性的な電車を入れる事で台湾観光客を誘致し、同時に地方の活性を促進していくとしている。
また、江ノ電の天野社長によると、江ノ電と支線平渓線は2013年4月に観光協定を結んでより、一日周遊券の相互無償交換を実施し、約1万6000人の台湾観光客が日本で同周遊券を使用した結果となったが、日本旅行客はわずか1000人ほどだった事を報告した。これは、日本の交通チケットは高く、台湾観光客からすると「お得感」があるが、台湾の交通チケットはもともと安いため、日本人への効果が薄く、日本からのアウトバウンドには優待券以外のプロモーション活動を行わなければならないと主張。
一方台湾鉄路管理局の鐘清達副局長は、台湾鉄道が1888年に開通してより130年が経ち、遺跡のようなレトロがたくさんあるため、今後は鉄道のリソースとして博物館などで歴史的文化遺産を受け継ぐ事も、観光客誘致に不可欠であると指摘。そのためにはメンテナンスのできる人材育成にも力を入れていくべきだと指摘し、「日本はメンテナンス力も高いため、今後は互いに連携を取りながらニーズに合わせ、協力していく事も必要」と強調した。
台湾一行、視察を通して愛媛文化に触れる
なお、通常毎年10月に行われる愛媛伝統の祭り「神輿の鉢合わせ」が今回の日台観光サミットに合わせて6月3日、特別開催され、台湾一行は神輿の鉢合わせの鑑賞、そして実際に鉢合わせの体験をしたほか、日月潭と姉妹締結している瀬戸内しまなみ海道を視察した。瀬戸内しまなみ海道のサイクリングを体験した周局長は、「日月潭とはまた違ったサイクリングが楽しめる。日月潭は湖で、しまなみ海道は海のイメージが強い。サイクリングしながら色々な発見ができ、サイクリングは生活と一体となっている。しまなみ海道でサイクリングする人は是非日月潭にも来てほしい」と誘致した。
愛媛県と台湾は同じ「松山」という地名を持つ事からゆかりがあり、今までさまざまな交流が行われてきた。愛媛県の中村時広知事は20年前に初めて台湾での松山空港に降り、その時同じ名前の空港がある事を初めて知った。そして、「『松山空港発松山空港着』の飛行機を飛ばしたい」との想いから行動を開始してより7年後の2013年10月、念願のチャーター便就航が実現した。それより毎年チャーター便の運航がされ、多数の観光客の好評を得ているとの事。そのほか、2011年11月には道後温泉と北投温泉、2013年10月JR四国松山駅と台鉄松山駅、2014年10月瀬戸内しまなみ海道と日月潭の友好協定が結ばれており、さらに今回の来日中であった同1日には愛媛県と台中市の友好協定が締結された。
(2017/6/13)