全長11.98m、全幅2.48m、車高3.6m、自重13.6トンという巨体にもかかわらず、左右の揺れ角度38度までを許容し、万一転落などで数度回転したとしても車体の損傷が少ないという安全性の高い観光バスが台湾から輸入され、6月22日に福岡市東区の筥崎宮でお披露目された。
製造したのは台湾台南市のバスメーカー嘉馬汽車有限公司(JIA MAモーター:呂文瑞社長)、輸入したのは福岡でバス・トラック・ダンプ等の大型車両の整備・販売を行う博洋自動車株式会社(吉田佳史社長)。
両社が、日本向け大型観光バスの製造・輸入の総括的な業務契約締結を発表したのは今年の1月17日。それからわずか5ヶ月余りという短時間で1号車の引渡しが実現した。日本の常識からすれば驚異的なスピード納車だ。もちろん契約発表前から頻繁な打合せが行われていたとはいうものの、製造の本格化は今年に入ってからであり、かつ初めての右ハンドル車への挑戦というハンディを乗り越えてのものである。その技術力と管理力には舌を巻かずにはいられない。
安全・安心への配慮は、車体の前後・左右・上下6ヶ所に設置した人や物の検知センサーだけでなく、通常の非常口に加えて後方天井に緊急脱出口を設け、万一の救出に備えていることにも表れている。「ユーロファイブ(Euro5)」排ガス規制などの環境対策も万全だ。
また、フルオートマティック運転やシンプルな計器の配列など、乗員に優しい設計が随所に見られる。
一方、乗客は、大きい窓で広い視野の景色を楽しむことが出来る。またカラオケ好きの台湾製だけに高性能小型大音量スピーカーが12個も配置されているのも嬉しい。さらに乗り降りしやすいように、走行時に比べて車高を下げたり、車体を傾ける機能も装備しているというから驚きだ。トランクルームも通常のものより大型スーツケース三個分以上広くとり、左右どちらからも積み下ろしができる。
なぜこのようなことが実現できたのか? 吉田社長によれば、イタリア・イベコ社を始め、ヨーロッパ、日本、韓国、中国など数社との提携で培ってきた技術力だけでなく、JIA MAモーター技術陣のモノ造りの姿勢が素晴らしいという。最新の製造装置に職人魂が注入された結晶がこのバスなのだと言う。
呂社長も世界各国から集めた最強・最良の部材を優秀な技術者が1つ1つ丁寧に成形し、ヨーロッパ基準という厳しい条件をクリアしていることに胸を張り、走行の安定性と安全性に絶対の自信を見せる。
受注から納品までのリードタイムは5ヶ月程度。販売価格はサンプルカーと同じベーシック仕様で1台3,600万円に設定し、ユーザーの要望によりオプションを付ける。販売台数は2018年までに60台を達成したいとしているが、呂社長は東京オリンピックのある2020年までに200台はいけるのではないかと見込んでいる。