国際機関における台湾の立ち位置について討論

0
4人のパネリスト(左から台湾貿易センターの劉世忠副董事長、日本貿易振興機構アジア経済研究所の竹内孝之副主任研究員、毎日新聞論説室の坂東賢治専門編集委員、東京外国語大学大学院総合国際学研究院の小笠原欣幸准教授)

近年、台湾はアジア太平洋経済協力(APEC)や太平洋諸島フォーラム(PIF)など58団体の国際機関(多数の国家が共通の目的を共同で実現するために合意によって作る国際的な団体)への加盟(うち21団体はオブサーバーとして)が叶っている。しかし、使用されている名義は“中華台北”などといった抽象的なものも含まれている。さらに、昨年9月には、カナダ・モントリオールで開催された国際民間航空機関(ICAO)総会で参加が認められなかったほか、今年5月、スイス・ジュネーブで開催された世界保健機関(WHO)総会への参加も見送られたという現状があるのも事実である。

このような状況下、10月12日に日本記者クラブ(東京都千代田区)で行われたアジア調査会主催の「国際シンポジウム」で、台湾の国際機関における立ち位置について認識を深めるべく、「台湾と国際社会 台湾社会の動向を視野に」をテーマにパネルディスカッションが行われた。台湾から前台南市副秘書長である台湾貿易センターの劉世忠副董事長を招き、毎日新聞論説室の坂東賢治専門編集委員、日本貿易振興機構アジア経済研究所の竹内孝之副主任研究員、東京外国語大学大学院総合国際学研究院の小笠原欣幸准教授の4人のパネリストが、台湾の国際機関参加をめぐる戦略や課題、台湾アイデンティティや社会、経済の動向について討論した。

台湾と国際社会についてのパネルディスカッション

劉董事長は、「台湾の国際参与の立ち位置」について「効能性の国際参与」を強調。「『ひとつの中国』を主張している中国大陸による弾圧などの政治的問題により、国際機関への参加は難しいかもしれないが、地方自治体など民間レベルでの交流により国際参与に際して不足している部分を補う事ができる」と述べ、災害発生時の国を超えた相互協力や、観光やグルメにおけるソフトパワー(軍事力や経済力に関わらず国際社会から信頼を得る力)があると主張した。さらに、台湾の蔡英文総統が現在打ち出している新南向政策に触れ、「積極的に新しい市場を開拓する事で、国際機関において新しい機会を作っていくべき」とした。

国際シンポジウム開催の様子

一方、竹内副主任研究員は、台湾が国際機関から疎外されている理由について言及。国際連合での中国代表権を中華人民共和国(中国大陸)政府に移転した事により「中華民国」としての加盟資格を失った事や、日本やアメリカなど主要な西側諸国との外交関係も断絶した事が背景にある事を指摘。今後は、既存の地位を活用して国際空間を拡大するなどの打開策を述べた。

(2017/10/12)