福岡で「台湾機械産業及び関連見本市セミナー」を開催

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台湾経済部国際貿易局が主催し、台湾貿易センター福岡事務所(駱慧娟所長)が実施した「台湾機械産業及び関連見本市セミナー」が10月5日、ソラリア西鉄ホテルで開催された。

同セミナーは、2019年3月に台北市で開催する「台北国際工作機械見本市(TIMTOS)」に向け、見本市への理解を深め、新たなビジネスチャンスを創出するきっかけづくりを目的として開いたもので、機械メーカーや機械関連産業、商社、メディアなどから30名が参加した。

台湾貿易センター本部展覧業務處・郭明修副處長の開会の辞に続いて、まず同處の頼栄春プロジェクトマネジャーがスライドを使って台湾機械産業の概況とTIMTOS2019について説明した。

頼栄春プロジェクトマネジャーの説明を聞く参加者たち

台湾ではICT(台北など北部地方)、精密機器(台中精密機械科学技術イノベーションパークを中核とする「ゴールデンバレー」)、電子部品・光エレクトロニクス(台南など)、石油化学及び鉄鋼(高雄など)等の産業が地域ごとにバランス良く配置されていること。その中でも機械産業は、台中、台南周辺の直径60km内の地域に16,655社のメーカーがパーツから完成品までのサプライチェーンを形成していることがアピールされた。これらの地域では日本の工作機械が多く使われ、製品の信頼性を高めていることも付け加えられた。

頼氏は、このような背景を持つ台湾で2年に一度開催される台北国際工作機械見本市(TIMTOS:次回は2019年3月)に日本企業が出展し、或いは参観することで人脈を広げ、国内外からの出展企業とのビジネスチャンスを拡大してもらいたいと締めくくった。

次いで「日本企業から見た台湾機械産業ビジネス」と題して株式会社長尾製作所(大分県佐伯市)の長尾浩司社長が同社の台湾事業の経緯と現状、今後の展望、日本と台湾企業のビジネスの可能性等について次のように講演した。

前列、長尾浩司氏(左)と川野 清氏(右)

当社は大分県佐伯市で精密板金加工を行っている。台湾企業との取引のきっかけは2009年のリーマンショックで受注が大幅に減少したことで、大幅なコスト削減に対応できるパートナーを必要としたことである。中国、韓国はコスト面では要求を満たしたが、技術面で不安があり、台湾企業に落ち着いた。台湾企業との連携は、社団法人台湾電子設備協会の川野清氏の紹介で高雄市の企業と知り合い、技術指導するところからスタートし、2011年から本格的に板金製作の委託を開始した。

台湾の企業は技術の習得に熱心で、環境変化への対応もスピーディであり、パートナーとして満足している。今後は鉄道車両部品ビジネスなども一緒に進めていきたい。また日本の企業が内向きなのに対して台湾の企業は海外進出に積極的なので、台湾を拠点に海外展開にもチャレンジしたいと考えている。国内にせよ海外にせよパートナー企業との提携においては、信頼関係を醸成・確立することが必要である。このためには相手に惜しみなく情報や技術を提供する必要があるが、台湾は親日的であり、安心してこれを行うことができる。

精密板金加工について言えば、最近発表されたトヨタ自動車とソフトバンクとの提携に見られるように、今はまさにEV時代、AI時代の幕開けであり、ICチップの需要は今後爆発的に増加するものと考えられるが、当社は台湾の企業とタッグを組んでこれに対応したいと考えている。

長尾氏の講演に続いて行われた交流会では予定時間をオーバーする質疑応答が行われたが、その大半は、アフターサービスを含む台湾企業の営業力に関するものであった。

フロアからの質問とアドバイス(1)
フロアからの質問とアドバイス(2)

日本側からは、台湾企業がもう少し熱心に日本への売り込みと定期的なアフターサービスを図ることで更に大きい売り上げが期待できるのではないか、との声が多かったが、台湾側からは、台湾は中小企業が多数を占めるため条件的に技術者を定期的に派遣するアフターサービス営業は難しいこと。それを補うためにIoTを活用したスマートメンテナンスや、距離の近さを生かしたオンサイトメンテナンスを行いたいとの考えが示された。

日本の抱えるもう一つの問題点として、機械産業界に「トータルな視点からの提案営業力」が失われつつあることが指摘され、その代替機能を台湾側が果たせないか?との意見が出たが、これについてもそれほど簡単ではない旨の応答があった。

これらに関する様々な局面からのやり取りの末、日本への売り込みにあたっては、営業機能の高い日本企業との提携も検討すべきというところに落ち着き、東京、大阪、福岡にある台湾貿易センターの各事務所への期待が寄せられた。

最後に、本セミナーの関係者が両国の機械産業の連携強化を願って集合写真に納まった。

日台機械産業の連携強化を願う関係者たち(左から、川野清、頼栄春、長尾浩司、郭明修、駱慧娟の各氏)