台湾政府はこのほど、8月16日に米トランプ政権が台湾へのF16戦闘機売却を承認し、議会に通知した事を受け、総統府や国防部、外交部が同19日、それぞれ感謝を表明した。関係筋によると、総額は約80億米ドル(約8500億円)。米が戦闘機を台湾に売却するのは1992年以来27年ぶり。トランプ政権は今年7月にもM1A2Tエイブラムス戦車や携帯式地対空ミサイルなど約22億米ドル(約2300億円)相当を台湾に提供する有償軍事援助(FMS)案を承認しており、台湾との連携を強めて中国をけん制する狙いがあるとみられる。
これにより台湾総統府は、新型戦闘機の獲得により台湾空軍の戦闘力が大幅に強化されるとし、トランプ政権が台湾の安全保障を重視している姿勢に感謝を表した。また台湾国防部は、この売却案ができるだけ早く米議会の同意を得られるよう期待を寄せた。さらに台湾外交部は、F16売却は台米の安全保障におけるパートナー関係の緊密さとさらなる向上を十分に表すものだとした。
なお、台湾国務省の高官は8月20日、売却決定について「台湾が十分な防衛力を維持できるよう支援するものだ」と強調した。さらに中国側が「主権侵害で内政干渉だ」と反発しているのを念頭に「『一つの中国』を尊重する米国の対中政策に変わりはない」と述べた。
米からの台湾へ戦闘機売却で中国政府が反発
中国政府はこのほど、米政権による台湾への新型戦闘機「F16V」売却の承認に反発した。これを受けて8月19日、台湾の対中国政策を所管する大陸委員会が報道資料を発表。「北京当局が台湾海峡の緊張を高めている張本人」との認識を示し、「台湾の自己防衛能力向上や平和維持に対してとやかく言う権利はない」と反論した。
中国外交部の耿爽報道官は同19日の午後、台湾への戦闘機売却を取りやめるよう米に要求。やめなければ自身の利益を守るため、必要な措置を取るとした。中国の対台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は報道資料で、蔡英文総統や民進党政権が「米の手先となることをいとわず、高いみかじめ料を米に納めている」と批判した。
一方、台湾大陸委員会は、台湾が中華人民共和国の一部であった過去はこれまでにないとの立場を改めて示し、台湾は中国の圧力に決して屈しないと強調。中国側に対し、台湾海峡や地域の緊張を高める行為をやめるよう訴えた。