毎日のように新型コロナウイルスによる肺炎の蔓延が報道され、人々の健康維持に各国の政府が躍起になっており、その影響が国際的なサプライチェーンを直撃して世界同時株安にまで発展する中で、従来から台湾の世界保健機関(WHO)復帰を訴え続けてきた陳忠正駐福岡総領事が台湾新聞の緊急インタビューに応じた。
記者:日本ではクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での集団感染などもあり、多数の感染者が出ていますが、台湾の状況はいかがですか?
陳: 2月27日現在の台湾における感染者数は32名。死者は1名にとどまっています。発生源の中国と至近距離にあり、人の行き来も他国とは比較にならないほど多い台湾がこのような状態を保っていられるのは、蔡英文政権の必死の水際対策と並んで、台湾の保険医療制度や医療水準の高さが挙げられると思います。各国の生活コストに関するデータを提供するウェプサイト「Numbeo」が発表した20年度のヘルスケア指数ランキングで、台湾は昨年に続き1位でした。米国のエグゼクティブ向け雑誌「CEO WORLD」が行った19年度のヘルスケア指数調査でも、トップにあります。
記者:しかし、どれほど台湾の医療水準が高くても、世界的な人的往来が頻繁な現在、国境をまたがる未知の感染症に対抗するためには、最新の防疫関連情報の共有や他国との経験の共有が不可欠ではないでしょうか?
陳:その通りです。しかし「台湾は中国の一部」とする中国の圧力と妨害で台湾は世界保健機関(WHO)から不当に締め出され、オブザーバー参加さえ認められていません。これは日本にとっても大変なことなのです。昨年1年間の日本から台湾への訪問者は200万人を突破しました。台湾から日本への訪問者も480万人に達しています。また、台湾在住の日本人は約2万人に及びます。台湾が世界の防疫の抜け穴になれば、日本人にも大きい影響があることを知って欲しいのです。
記者:そのことは、日本の人々も分かっています。今回の新型コロナウイルスの感染が発生する前の昨年5月に当時の河野太郎外相や大菅岳史外務報道官が台湾のオブザーバー参加を支持する立場を表明しました。また、九州を中心に台湾のWHO復帰を求める5,000人以上の日本人の署名が集まり、それを持って陳時中衛生福利部長(厚生労働大臣に相当)がジュネーブの世界保健機構総会へ行きましたね。
陳:あれは非常に有り難かったです。日本の国民が草の根的に台湾のWHO復帰を支持してくれたことで陳部長も大変心強く感じたと思います。直接的でないにしてもこのような動きが、今回の新型コロナウイルス対策会議に台湾がWEB参加することにつながったのかも知れません。
記者:今回のことで、多くの日本人は世界と連携した防疫体制確立の必要性を強く感じたと思います。特に人的往来や経済活動で深い関係を持つ台湾との医療・情報面での関係強化が不可欠であることを認識したと思います。
陳:台湾は、安倍晋三首相が昨年の国会で「防疫に地理的空日を生じさせるべきではない」としてWHOへの参加を求める台湾の訴えを支持してくれたことを感謝しています。日本政府の理解や市民の署名活動は台湾にとって非常に大きい励みになっています。
WHO憲章には「健康権は人間として有する基本的権利の一つである」と記載されています。いかなる理由があろうとも、台湾の住民2,300万人が世界の医療ネットワークから不当に排除されることがあってはなりません。また、世界は繋がっているのです。どの国も自国だけで感染症を防ぐことは出来ません。空白地帯を設けることは誰の利益にもならないことが、分かったと思います。
台湾は世界の公衆衛生および防疫体制に組み込まれることの必要性と緊急性を引き続きアピールし、新型コロナウイルスによる肺炎の終息に向けて高度な医療衛生技術や防疫の経験を役立てていきたいと思います。
記者:台湾を「今すぐWHOに復帰させるべきである」ことが良く分かりました。貴重な時間を有り難うございました。