亜熱帯と熱帯にまたがる南国地域にある台湾は、昔から「果物の王国」と呼ばれており、台湾産の果物は世界中から人気を集める。その台湾の果物の代表が「マンゴー」「ライチ」「バナナ」そして「パイナップル」だ。今年の3月より中国から「禁輸措置」を受けた台湾産パイナップルは、台湾政府の喧伝などにより日本の各メディアで報道され、目下、大きな話題となっている。
中国の「禁輸措置」を受けた台湾産パイナップルだが、台湾政府は、国内の需給拡大とともに輸出の多様化を進めている。日本でも各メディアの報道により注目され、2021年に入り、台湾産パイナップルの日本輸出はすでに5000トンを超えた。現在は、日本の大手スーパーでも流通している。これを受け蔡英文総統は、自らのSNSに日本語で「台湾産パイナップルを応援してくださる日本の皆さん、ありがとうございます」と感謝の意を表した。
台湾産パイナップルは、過去の歴史を見ても日本人と深い関係がある。台湾で最初にパイナップルの栽培をはじめたのは日本人だったからだ。日本の統治時代の台湾は、缶詰パイナップルの工場を作るため、当時、台湾南部の農産業区でパイナップルの栽培が広く行われていた。その後、現在に至るまでパイナップルは品種改良が行われ、この結果、現在の台湾代表する果物となっている。
南国の恩恵を受けて育った果物は、段階的に農業改良などの技術革新が行われ、これまで多様な品種を作り出してきた。1998年から台湾南部に広く栽培された「台農17号」と称する「金鑽鳳梨」は、毎年台湾のパイナップル輸出量の8割を占めており、永年にわたり世界中の消費者から愛され続けている。その特徴は果実の色が金色で、糖度が他の品種と比較してやや多く、酸味が少ないため余計に甘さが強く感じられる。一般的なパイナップルは真ん中の芯は硬く甘味がなくよく切り捨てられるが、「台農17号」はその芯まで柔らかく、そして甘い。食べてみると果実と別の食感が人気の理由だ。
さらに、改良された「台農6号」と称される「蘋果鳳梨」は、食感はアップルで、しかも甘さが感じられるため「蘋果鳳梨(アップルパイナップル)」と呼ばれている。台湾のスーパーでよく見られる代表的なパイナップルの一つでもある。
また、ハワイから輸入して栽培をはじめた「台農20号」と称する「牛奶鳳梨」は、他の品種と比べミルクのような白い果実が特徴だ。特別な香りもあり、外観こそ他品種と比べ相違はあるが、その旨さは負けていない。近年では2005年に「台農21号」と称された「黃金鳳梨」。熟成した果実は「台農17号」よりもさらに金色が綺麗で、その保存性もかなり優秀。糖度も他の品種と比べ高く、現在最も人気を集める逸品だ。
このほか、台湾産パイナップルの品種は数多い。現在、日本に輸出されている品種は「台農17号」だが、近い将来、これと肩を並べる台湾産パイナップルの品種が輸入されると予想される。