日本政府が6月3日、台湾向けに英製薬大手アストラゼネカ社製の新型コロナウイルスワクチン約124万回分を提供すると決めた翌日の同4日午後、台湾の空港に無事に到着した。このワクチン提供を受け、台湾の蔡英文総統は同4日「迅速な支援に感謝します」と自身のSNSで表明した。
さらに「自由と民主主義という同じ価値観を共有するパートナーからの迅速な支援に感謝します」とのコメントを発表。台湾外交部も「日本は国内感染が厳しいにもかかわらず、台湾を助ける決定をしてくれた」と、心からの謝意を表明した。
一方、ワクチン提供を巡っては、水面下で台湾政府と日本政府が双方に働きかけを行っていた事が関係筋からの情報で判明した。一部の報道によると、蔡英文総統が安倍晋三前首相に直接謝意を伝えていたことが6月4日にわかった。安倍氏が同日、報道機関の取材で明らかにした。安倍氏によると、5月28日に報道機関などが「日本政府から台湾へワクチン提供を検討している」と報じたのを受け、蔡総統が安倍氏に直接電話をかけ、台湾へのワクチン支援について謝意を示したもの。安倍氏は「東日本大震災や昨年の新型コロナ感染拡大に伴うマスクの提供など、日本が困難の中にあったときも常に台湾は真の友だった」と述べた。
この6月4日は、天安門事件から32年の日と重なる事に関連付け、蔡総統はまた、フェイスブックにメッセージを投稿。「同じ信念を抱く人たちが互いに支え合わなければなりません」という書き出しで、「6月4日というこの日に日本からのワクチンが台湾に届きます。私たちは同じように自由と民主の価値を堅持するパートナーから助けられ、民主主義にいっそうの自信が得られたことに感謝します」とした。さらに、「32年前のこの日、天安門広場で犠牲になった若者たちのことを忘れることはありません」としたうえで「自由と民主を誇りに思う台湾のすべての人たちがこの日を永遠に忘れず、信念をかたく守り、困難にも動揺することがないと信じています」と結んだ。
日台の相互支援はこれまで、東日本大震災で台湾から日本に200億円超の義援金が届き、2020年4月のマスク不足が深刻化した際は、台湾から医療用マスク200万枚が送られた、などの経緯がある。
台湾蔡英文政権を強く非難~中国
台湾が、日本からの新型コロナウイルスのワクチンの支援に感謝の意を示した事について、中国政府で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室は、報道官が記者の質問に答える形で談話を発表した。談話では「台湾で感染が拡大して以降、われわれは何度も中国製のワクチンを提供する意向を示してきたが、民進党当局はさまざまな口実をつくって阻んできた」とした。その上で「一日も早く免疫のバリアーを築く事が重要なのか、それとも中国と台湾の政治的な対立をもてあそぶ事が重要なのか、民進党当局は台湾の人々に答える必要がある」と主張し、台湾の蔡英文政権を強く非難した。
蔡総統は「台湾では5月中旬から感染が拡大しています。ワクチンの調達が難航し、海外の製薬会社からのワクチン調達が中国の妨害で難しくなっている」と、中国を批判していた。