台湾戒厳時代を舞台にしたVR映画「離れられない人(中国語:無法離開的人)」は、第79回ヴェネツィア国際映画祭クロスリアリティ部門「Venice Immersive」の最大賞「ベストイクスピアリエンス」を受賞したことが9月12日、わかった。
「Venice Immersive」は360度ビデオ、インスタレーションやバーチャルワールドなどを含む作品が対象となっており、本年度はラッヅアレッド・ヴェッキオ島で現地開催となった。ノミネートされた作品数は30部でもあり、台湾は「離れられない人」のほか、「残り(中国語:遺留)」と「赤きテール(中国語:紅尾巴)」もノミネートされた。
前回台湾の作品が同賞に選ばれたのは2017年黃心健監督の「砂の部屋(中国語:沙中的房間)」だった。
「離れられない人」は台湾文化部所属の国家人権博物館が陳芯宜監督に依頼して作ったVR作品だ。1950年代の白い恐怖時代を背景にし、政治犯の経歴をVR技術で再現させ、視聴者に共感をもたらした。
陳芯宜監督は授賞式上で「作品の撮影は約2年間がかかり、その間は多くの方から支援を得て、本当に嬉しいです」と語り「この作品を通じて、民主主義の価値を信じて犠牲した者の精神を保ちたい」とした。
李永得文化部長は受賞後、文化部ホームページで声明を発表し「この度ヴェネツィア国際映画祭で受賞されたことは台湾市民の光栄です」と主張した。また映画内容について「台湾の民主主義は多くの方の犠牲により成し遂げました。国家人権博物館はその歴史を記録し、将来人権の発展に繋げなければならないです」と書いた。
なお、日本勢は3年連続「Venice Immersive」にノミネートされ、今回選ばれたのは伊東ケイスケ監督が作ったVRアニメーション「Typeman」だ。