台湾剣道連盟の陳信寰会長(教士八段)と廖錦輝副会長(七段)が2022年12月15日に来日して、財務省に鈴木俊一大臣と秋野公造副大臣を表敬訪問。翌日には衆議院第二議員会館地下の道場で関係者と稽古を行い、汗を流した。
秋野副大臣は福岡県選出の参議院議員。長崎大学医学部の出身で剣道四段。以下、剣道を通じた日台交流について秋野氏に話を聞いた。
―台湾にも剣道連盟があるのですね―
はい。台湾の剣道は日本統治時代に伝わりました。世界剣道選手権大会でもたびたび入賞しています。
―陳会長との出会いは?―
私の前任である弘友和夫元参議院議員(元環境副大臣、教士七段)が陳会長と親しく、表敬のご意向を伺いました。一方で、弘友さんは、鈴木財務大臣が、かつて環境大臣だったときの副大臣だった関係もあり、財務大臣室にご案内することにしました。
―陳会長はどんな方でしょうか?―
剣道一筋の方です。幼少期に剣道を始め、現在は教士八段。1984年に大分県の日本文理大学に留学し、学業に励まれながら、宮本武蔵先生の二天一流の第10代宗家であった今井正之先生の教えを受けて第11代宗家を継いでいます。だから日本語も堪能です。東日本大震災発災直後には、高雄市で開催された国際都市剣道交流大会で、参加者に被災地に対する支援を訴えて下さり、台湾の真心を被災地に届けてくださいました。
―今回の来日の目的は?―
1つ目は、衆議院道場の主任講師である中田琇士範士八段のご指導を仰ぐためです。翌16日にご案内して、中田先生のもとで陳会長、廖副会長、弘友元議員、私が稽古に汗を流しました。
2つ目に、私が2021年3月22日の参議院財政金融委員会において、剣道と剣道具を国の文化財とするよう求めた質疑に賛意を示されて、熱く語って下さいました。
3つ目に、陳会長は台湾行政院文化部と高雄市政府文化局の指導のもとで国際都市剣道交流大会を開催しており、今年も3月24日から始まりますが、日本の剣道家にも参加を呼びかけられました。1月26日時点で既に日本から70人を超える参加者が登録しているそうです。
―現在、台湾では剣道が盛んですか?―
陳会長によると、台湾剣道連盟にはおよそ300名の会員が加入。陳会長が稽古を主宰する高雄市武徳殿は日本統治時代の大正13年(1924年)に建造され、現在、高雄市が古蹟に指定し保存しています。床面積は約100坪。リフォームされた床板にはスプリングが施されたうえで台湾檜が用いられており、月曜以外の午前と午後に初心者、中級者、高段者に分かれて稽古が行われているとのことです。
但し、台湾においては、幼稚園、小学校から剣道を始めても、中学、特に高校進学以降は勉学に忙しく、剣道をやめてしまう場合が多い点は残念だと話されていました。
―秋野議員は2年前の国会質疑の中で「剣道と剣道具を文化財にするように」との提言をされたのですね―
はい。剣道と剣道具を文化財にするよう求めて、文化庁は「順次、検討に着手する」と答弁しました。提案を続けていかなくてはなりませんが、剣道と剣道具は日本で育まれた固有の文化です。なかでも剣道が礼に始まり礼に終わることは社会によく知られています。厳しい稽古の中でも礼を守り抜くことは、剣道の中で継承されてきた日本の誇る文化であり、私も稽古の中で礼を尽くしぬいて、社会生活に反映させたいと願っています。また、澄み切った心で稽古に臨むことを教わっています。迷いがあると、中田先生に直ぐに見抜かれてしまいます。打つと決めて即座に正しく打ち切るために、身体と精神の繋がりを意識できるようになりたいものです。試合での勝敗よりも、気の充実といった精神的な要素が評価されるのも剣道の中で継承されてきた日本の文化です。
日本文化として後世に継承すべき武士道精神が、「日本精神(ジップンチェンシン)」として剣道を通じて台湾にも生き続けていると、陳会長は話して下さいました。陳会長は私の国会質疑にも双手を挙げて賛成してくださっていますので、これを機に再度文化庁に促したいと思います。
剣道を習うものとして、武士道精神(=日本精神)を通じて日台交流が深まればこれほど嬉しいことはありません。
【秋野公造】
1967年7月11日生。長崎大医学部卒。医師。長崎大学、米国シーダース・サイナイ・メディカルセンター、厚生労働省にて勤務。2010年参院初当選。当選3回。福岡選挙区。2022年8月より財務副大臣。