蔡英文総統は3月29日、台湾を出発して外交関係を結ぶ中米グアテマラとベリーズを国事訪問した。米国経由の訪問で、往路はニューヨーク、復路はロサンゼルスを経由して4月7日に帰国した。新型コロナウイルスの流行のため、4年ぶりの海外歴訪となった。
蔡総統は、専用機に搭乗する前に談話を発表し「国交国との交流、協力深化に向けた決意を示す」と意気込みを語った。その後報道陣に笑顔で手を振って専用機に入った。
「米国やほかの民主主義国家との関係はかつてなく重要」
蔡総統は3月29日(現地時間)、米ニューヨークに到着した。宿泊先のホテル前では在米台湾人が集まり、台湾と米国の国旗を振って蔡総統の訪問を歓迎した。一方、道路を挟んだ向かい側には中国系の人々が蔡総統の米国経由に抗議活動を行った。
蔡総統は到着後、在米台湾人団体が開いた懇親会に出席した。蔡総統をはじめ、懇親会に出席した要人には米ニュージャージー州のマーフィー州知事、米国対台湾窓口機関・米国在台協会のローセンベーグ会長などの重鎮が顔を揃えた。
蔡総統は挨拶で「米国やほかの民主主義国家との関係はかつてなく重要になっている」と語った。また台湾の国際情勢については「台湾は巨大な挑戦に直面しているが、民主主義陣営と一致団結すれば、我々はより強くなれる。台湾は友情を当たり前のものだと思わなく、今後も自由や民主主義、尊厳を守っていく」と訴えた。
蔡総統は翌30日夜、米シンクタンク・ハドソン研究所より、世界に卓越した貢献があった指導者に贈る「グローバルリーダーシップ賞」を受賞した。同研究所は「大きな勇気と決意で民主主義の台湾を率い、脅迫に対抗し、自由で開かれたインド太平洋を守っている」と受賞理由を話し、蔡総統の指導力を讃えた。
また総統府の張惇涵報道官は4月4日、同行のメディアに対し、蔡総統がニューヨークを出発する前に、米下院のジェフレス議員や、米上院のサリバン議員、エルンスト議員、ケリー議員とも会見したことを発表した。
蔡総統は会見で「バイデン大統領を始めとする米国政界が党派を問わず、台湾を一貫として支持することを感謝したい」とし、アフターコロナにおいて「台湾は信頼できるパートナーとして、全世界の経済成長に貢献する。また価値観と近い国と共に、地域の平和と安定を守っていく」と力強くアピールした。
国交国と関係強化に一致
蔡総統はニューヨークのスケジュールを終え、3月31日にグアテマラを訪問し、ジャマテイ大統領と会談した。両氏は関係をさらに強化していくことで一致し、基本協力協定に調印した。
ジャマテイ氏は会談後の記者会見で「台湾が普遍的価値を提唱する決意と自信を持ち、国民の幸福を追求するパートナーであり続けることを願っている」と語った。蔡総統も同日の夕食会で「6年ぶりの訪問だ。グアテマラの進歩と変化を充分に感じ、今後の協力拡大を期待している」と述べた。
その後の4月2日、蔡総統はベリーズを訪れた。翌3日にブリセニョ首相と首脳会談を行い、同国会でスピーチを発表した。蔡総統は「台湾は強権国家による抑圧の前線に立たされ、中国からの日常的な脅威にさらされている」と訴え、国際社会の支持を呼びかけた。このほか、両国外相による技術協力協定の調印式に立ち会い、台湾が支援する綿羊やヤギの改良事業を視察した。
蔡総統はさらに在留台湾人との夕食会に参加し「ベリーズ在留台湾人の努力によって、台湾とベリーズの関係はますます安定したものになっている」と感謝した。
マッカーシー米下院議長と会談「超党派で台湾への支持を示したい」
中米国交国の歴訪が終わり、復路で米ロサンゼルスに立ち寄った蔡英文総統は4月5日、ロサンゼルス近郊にあるレーガン大統領図書館でマッカーシー米下院議長(共和党)らと面会し、会談が実現した。
マ氏の事務所が発した取材案内には、蔡総統を「台湾総統(President of Taiwan)」と表した。また、米政府系ラジオ放送局ラジオ・フリー・アジアによると「マッカーシー氏を含め、共和、民主両党の下院議員計18人が出席した」と報じた。なかでも最も注目されたのは、中国に関する特別委員会の委員長を務めるギャラガー議員だった。
蔡総統がロサンゼルスに泊まるホテル外では在米台湾人団体のほか、蔡総統を応援する中国系団体や抗議団体が現れ、両方が一時対峙していたことがわかった。
会談中は台湾の自己防衛の決心と能力の増長に言及。蔡総統は「平和を守るには自分を強くしておかなければならない」とレーガン氏の信念に触れ、平和的な現状の維持への決意を示した。また会談後の談話で「孤立されておらず孤独でもないことを台湾の人々に分かってもらった」と議員らの会談出席と台湾への固い支持を感謝した。
マ氏も会談後「台湾と米国の人々の友好関係は自由な世界にとって大きな重要性を持ち、経済の自由や平和、地域の安定の維持において極めて重要だ」と述べ、米国では党派を問わず台湾を支持すると改めて強調した。また台湾との連携については「台湾への武器売却の強化、経済連携の強化、共通価値観の普及」の3点を確認した事を明らかにした。
米テレビ局CNNは蔡総統の訪問について「蔡総統のように、一年の間に二人の米国国家議長と会談する外国指導者はいない」とし、これから台米関係を重視すべきと報道した。
なお、中国政府は同日、国営テレビ局「中央電視台」を通じて台湾海峡の中北部における「聯合巡航巡査専項活動」の展開を発表。蔡とマッカーシー両氏の面会をけん制した。台湾国防部は台湾メディアに対し「中国軍の動きはすでに把握している」と発した。
蔡総統の専用機は同8日午前1時、台湾に到着した。空港での談話で訪問の成果について「関係者の方々のおかげで、訪問は大成功で終わりました。これから台湾は団結し、世界各国との交流をさらに深化していく」と締めくくった。