台湾第2野党の民衆党の柯文哲党首は6月4日から同8日、日本を訪問した。出発前の台湾桃園国際空港で報道陣に「日本は台湾のアジアにおける最も重要な盟友で米国の重要なパートナーでもある。日本に対する知見を深めたい」と訪問の目的を話した。
早大で講演会開催「一家仇より一家親がいい」
同氏は翌5日、早稲田大学で講演会を行った。テーマは「台湾における民主主義の発展と新たな段階への挑戦」で、80人近い学生が出席し、その中に6人の中国人留学生が含まれた。
中国留学生から「柯氏の両岸政策に『両岸は一つの家族』の考え方は含まれる。次期総統選に出馬する者として中華民国に大陸地区は含まれていると考えているのか」と質問した。
柯氏は「一つの家族であることは、一つの仇敵であるよりも良く、断交するよりも交流する方が、けんかするよりも対話をする方がいい」との立場を示し「最も重要なのは、台湾と大陸は基本的に使用する文字も人種も同じで、同じ歴史と言語、宗教文化を持っているということだ。今日は政治制度と生活様式が異なるだけであり、交流しない理由はない」と述べた。
日本の実力者と面会「台湾のCPTPPへの参加を」
講演終了後は立憲民主党の野田佳彦元首相と面会した。野田議員は「日本が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を決めたのは自身の首相在任時だった。台湾の参加を歓迎する」と表し、台湾の世界保健機関(WHO)総会への参加も「支持する」とした。
さらに、日本の超党派議員連盟「日華議員懇談会」(日華懇)の会長を務める自民党の古屋圭司衆院議員らとも面会し、TPP加入などについて意見を交わした。古屋氏は「台湾が福島を含む5県産食品の輸入を再開したことで障害は排除された」とし、台湾の参加を支持する立場を改めて表明した。
同6日、柯氏は自民党の麻生太郎副総裁と東京都内で会談した。会談後の記者会見で「機密情報に話題が及んだため、内容は話せない」とした柯氏は「主に外交や国防分野で交流した」と述べた。また「台湾有事は日本有事」との見解も示されていたと明らかにした。
その後、立憲民主党の「日本・台湾議員懇談会」を訪問。蓮舫議員らと会談した後、蓮舫氏は「台湾の選挙について中国の日本に対する圧力は強くなる」としつつ「台湾の民主主義を重視する」との姿勢を示した。
その後の日本維新会との面会では、日本維新会と台湾民衆党の発展に言及。柯氏は「維新会の歴史について勉強した。わが党と同じ、地方政党から力を伸ばし、全国性政党まで成し遂げた」と述べた。維新党の馬場伸幸党首は挨拶で「地方政党から全国まで伸ばすには、国民の考えを理解し、ほかの政党と区別しなければならない」と語った。また馬場氏は面会で、今年8月に台湾を訪問すると話した。
また参政党も訪問。神谷宗幣参議員は同党について「国会においては1人しかいないが、地方においては120人以上の議員がいる」と紹介。双方は政党の発展策略、日本の選挙制度について話し合い、有権者への関心などに言及した。
NHKインタビューで尖閣諸島問題に言及
柯文哲氏は同7日、NHKのインタビューを受けた。日本、台湾と中国が領有権を主張する尖閣諸島に関し「台湾の人たちはこの土地が欲しいというわけでなく、そこで漁業ができればいいだけ」と発言した。
これに対し与党・民進党と野党・国民党は翌8日、それぞれ記者会見を行い「柯氏の発言は主権の問題を軽視している」と力強く非難した。柯氏の事務所の陳智菡広報官はSNSで「柯氏は国家の主権を守ることを堅持する」と返答し「ただ現実から考えれば、台湾の漁業者の生計におけるニーズを考える必要がある」と発言の意図を説明した。
日本外国特派員協会で最終の記者会見
日本訪問最終日の6月8日、日本外国特派員協会で記者会見を行った。「与党民進党と最大野党国民党は両岸の難局を解決できない」と批判した上で「連立政権を樹立し、中国との対話を求める」と語った。 同氏は外交面において台湾の役割について「米中の意思疎通の架け橋になるべきで、米中対立の駒ではない」と強調。日本との関係については「協力してより強靭なサプライチェーンを構築し、世界の科学技術と経済発展のために貢献したい」と期待を寄せた。