台湾では歩行者の安全問題への関心が高まる中、交通安全の向上を求めるデモ行進が8月20日、台北市内で行われた。参加者は「歩行者の事故死ゼロに」の目標推進などを訴えた。デモ開始前には土砂降りの雨に見舞われたものの、参加者は傘をさしたり、雨がっぱを着るなどして集めた。
台湾では昨年、交通事故により2700人以上の死傷者が出ており、欧米観光客から「歩行者の地獄」と呼ばれた。
デモは市民団体が主催。歩行者空間の比率を高めるなど歩行者用施設の改善の他、運転訓練や運転免許試験、運転者管理制度の改革▽歩行者妨害の取り締まりなど歩行者の権利を守る法執行▽交通関連の法制度の再構築▽「歩行者の事故死ゼロ」目標の推進―の5点を訴えた。
主催した「歩行者の死亡ゼロ推進聯盟」は「さまざまな事故が国の制度上の欠陥によって引き起こされており、これは交通の暴力だ」と指摘。今回のデモは「人を中心とした考え方が欠けている現行の交通制度に対する不満を参加者が自らの足で表明し、政府に対して即座に要求を聞き取るよう求めるのが狙いだ」と説明した。
また、今年5月8日に台南市で赤信号を無視した車と衝突に巻き込まれて亡くなった3歳の女児の父も登壇し、涙しながら歩行者の安全を訴えた。台湾でユーチューバーを従事する日本人「Iku老師」(iku先生)も参加して「次の犠牲者が出ないように」と呼びかけた。
さらに次期総統選に出馬する頼清徳副総統(与党民進党)、侯友宜新北市長(野党国民党)、柯文哲前台北市長(野党民衆党)らも参加し、それぞれの交通政策や事故死ゼロに向けて努力する姿勢を示した。
なお、デモに出席した王国材交通部長は、交通事故で多くの死傷者が出ている現状を謝罪。来年末までに全国600カ所の事故多発交差点の改善工事を完了させると約束。2030年までの歩行者事故半減、2040年までの歩行者事故死ゼロを達成すると宣言した。