【台北訊】台湾で8月23日、屏東県にある第3原子力発電所(核三)の再稼働をめぐる国民投票が実施された。投票の結果、賛成は434万1432票、反対は151万1693票で賛成が大きく上回ったが、有権者総数の4分の1にあたる500万523票という法定要件に届かず、不成立となった。投票率は29.53%で、全国公民投票としては過去3番目に低い水準となった。

台湾中央選挙委員会(中選会)によると、全ての県市で賛成票が反対票を上回り、特に金門県・連江県では9割を超える賛成率となった。一方、核三が立地する屏東県恒春鎮でも賛成比率は6割を超えたが、いずれも有効票が成立要件には届かなかった。
投票結果を受け、頼清徳総統は総統府で談話を発表。「この結果を尊重する」と述べたうえで「社会が多様なエネルギー選択を望んでいることを十分理解している」と強調した。その上で、原発政策については「安全性の確保」「使用済み核燃料の解決」「社会的合意」の3原則を堅持していく姿勢を改めて示した。
さらに「原子力は科学的な問題であり、一度の公投で解決できるものではない」と強調。原発再稼働の手続きには「二つの必須条件がある」と指摘。第一に原子力安全委員会(核安会)が法に基づき安全審査の手続きを定める事。第二に台湾電力(台電)がその手続きに従って自主的に安全検査を行う事だ、と説明した。
台湾では今年5月、最後まで稼働していた屏東県の原発が停止し「原発ゼロ」が実現した。一方で、電力の安定供給や半導体産業への影響を懸念する声も強く、今後も原子力をめぐる社会的議論は続く見通しだ。
2025.08.25