国民党の立法委員らに対するリコールはすべて不成立 李登輝友の会がセミナー開催 林省吾氏が講演

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日台友好団体の「日本李登輝友の会」は8月30日、東京都内で第98回セミナーを開催した
日台友好団体の「日本李登輝友の会」は8月30日、東京都内で第98回セミナーを開催した

【東京訊】日台友好団体の「日本李登輝友の会」は8月30日、東京都内で第98回セミナーを開催した。今回は「日本台湾寄進友の会」の林省吾会長が、7月26日、8月23日に投票が行われた「大罷免(リコール)運動」について講演した。台湾寄進は台湾で2016年に成立した独立派の政党。民進党に協力的な立場をとっている。セミナーには約40人が集まり、熱心に耳を傾けた。

昨年1月の立法委員(国会議員、定数113)の選挙で、与党の民進党は51議席にとどまり、野党側(国民党52議席、民衆党8議席)を下回った。このため、「総統は民進党、国会は野党」というねじれになっている。

親中派の国民党を中心に、野党側は頼清徳政権を掣肘(せいちゅう)する法案を次々と国会に提出したほか、今年1月には防衛力強化をめざした政府予算案を大幅に削減する修正案を強行採決した。こうした状況に反中派の市民団体などが反発して、公職選挙人員罷免法に基づいて、国民党議員31人と新竹市長を罷免対象として大罷免運動が始まり、「反共護台」(台湾を中国から守ろう)をスローガンに全土で盛り上がった。

事前の予想では、過去の総統選挙などの得票率では民進党は40%ほどにとどまり(2024年総統選挙の頼総統の得票率は40.05%)、当初から罷免の成立が危惧されていた。このため、頼政権がなぜ大罷免に踏み切ったか疑問がわく。林氏はこうした疑問に「大罷免運動は(上からの)民進党主導で始まったのではなく、下からの市民レベルから起こってきた」と説明した。

林氏は運動期間中、台湾各地の市民団体の事務所を回ってきたとして「運動を担っていた人々の中に、今まで政治活動に参加したことがないような20代、30代の女性が目立っていた。私の推測だが、親中路線に走る国民党が頼政権の足を引っ張っている状況に、母親たちが自分の子どもの未来を考え、危機感を持ったのではないか」と現地取材の感想を語った。

林氏は大罷免運動の背景に民進党内部の問題もあったとして、「頼清徳総統と、国会議員団をまとめる立場の柯建銘・総召(院内総務)に確執があり、柯氏が大罷免に乗り、頼総統が(民進党の)国会議員団をコントロールできなかった」と説明した。

李登輝友の会のセミナーで講演する林省吾氏
李登輝友の会のセミナーで講演する林省吾氏

国会議員31人が罷免対象となった国民党は受けて立った。結局、与党、野党とも党を挙げての全面対決になった。投票の結果は事前の予想通り、すべて罷免は不成立になった。

頼政権には打撃となり、林氏は「頼清徳総統は、政権運営はいっそう困難になった。それでも今まで政治活動に参加したことがなかった市民が参加した意義は大きい」と結論付けた。

台湾メディアによると、すべて不成立の結果を受けて、国民党の朱立倫・党主席は記者会見を開き、事実上の勝利宣言を行った。そのうえで、「おごる(頼清徳)政権に対して人民が警鐘を鳴らした」、「台湾は二度と(政治的な)空転を起こしてはならず、分裂してはいけない」などと述べて、大罷免に走った民進党を強く批判した。

市民の中には「国民党議員に少し緊張感をもたらせた。大罷免運動は悪いことではなかったと思う」という指摘もある。

次の大きな与野党対決は、来年11月の全22県市で行われる県市長・地方議員を選ぶ統一地方選挙となる。

2025.09.01