【東京訊】在日台湾原住民連合会と一般社団法人TOURI ASSOCIATIONが設立した「台湾原住民収穫祭実行委員会」主催の「収穫祭2025」が9月6日、東京・中野区役所「ナカノバ」「ソトニワ」で開催された。期間は二日間だった。「その生命力と神秘性に触れる感動の二日間」と題する祭典は、日本での台湾原住民のみの単独イベントとしては過去最大規模と見られる。中華民国台湾原住民委員会の助成支援もあった。(協力=中野国際文化協会、東京台湾の会)
開会式と儀式の司会は永田華奈氏。台湾台東生れで日本人と台湾排灣族のハーフ。現在在日台湾原住民連合会副会長も務めている。トークセッションした米田太華志氏とは姉弟で、創設会長の米田華絵氏は二人の母親。父親は日本人。今回の祭典はご家族の支援も欠かせなかった。

開会の挨拶で在日台湾原住民連合会の黄秀蘭会長は、来賓、来場者への謝意を伝えた。その後、来賓挨拶では、台北駐日経済文化代表処僑務部李承芸副部長、中野区議会日台友好議連高橋かずちか議長より祝辞が述べられた。

在日台湾原住民連合会の黄秀蘭会長が開会の挨拶をした


洪亦霆氏(新竹五峰茅圃部落出身=泰雅族)の一人で行った儀式では、厳粛で魂が洗われるような静かな感動に会場が包まれた。儀式の演題は「感謝祈福歌謠~來自雪霸的聲音」で、その前半は収穫祭の成功を祈念する「感謝祈福歌謠」として『感謝歌(Uyas Kumalas)』を唱えた。引き続き『雪霸(シェイパ)からの声』という「口簧即興(Minkahul hngyaa’n na Papakwaqa)」が演奏された。(注「口簧」とは口琴のこと)

この祭典には、中華民国の「国立台湾科技大学大原民社団」の台湾原住民学生らによる歌舞も披露された。圧倒的なパフォーマンスには来場から感動の声が上がった。男女の見事な和声、キレのある舞踊、神秘的な儀式など、どの演目も見事だった。

また、今回が日本初演の伝統楽舞歌謡『相遇』も披露された。「相遇」とは「出会い、邂逅」という意味で、この演目では表現力の凄さを見せていた。
全国で人気を博している「在日台湾原住民連合会」の歌舞メンバーも歌舞を披露した。また「台湾原住民ファッションショー」では、華々しく各民族の特徴が披露された。

なかでも、演舞を沸かせたのは「科技大学大原民社団」と「在日台湾原住民連合会」とのコラボだった。即興で来場者を一緒に舞踊するなど「大會舞(大円舞)」は二日間とも盛況だった。「台湾原住民、日本人、華僑、老若男女が手をつなぎ、全員が輪になって踊る」、これこそ台湾原住民による人と人との日台交流といえるだろう。

このほか「台湾原住民の文化、芸術、歴史を知っていただきたい」事を目的に実施されたのが二つの「トークセッション」。まずは初日9月6日のトークセッションは、台湾の屏東県三地門郷長であり排灣族の曾有欽氏を講師として招き「排灣族における収穫祭の魅力と特徴について」。曾氏は文学博士で、排灣族の伝承や歌唱などを引き合いに、排灣族の伝統文化を文学的な見地から語られ、教育者としての立場からは伝統の継承について語られた。

二日目のトークセッションは、排灣族と日本人のハーフで医師の米田太華志氏が講師を務めた。題目は「台湾原住民族の中に残る日本・日本語」で、台湾原住民の歴史的、文化的、社会的な視点から、台湾原住民についての全体像を話した。

トークセッション後のインタビューでは台湾原住民について質問され、専門家のお二人の示唆に富んだ回答には、現在の台湾原住民が抱えている社会問題などについて思慮できる機会となった。インタビュアーは高橋檀氏(YouTubeチャンネル「台湾原住民チャンネルたにあTANYA」主催者)だった。

祭典はこのほか、台湾原住民の歌舞ワークショップ、台湾原住民の物産・展示などもあり、鮮やかな台湾原住民の色彩に染められた二日間だった。


今回の「収穫祭」は、多くの華僑団体、日本人団体、そして日本人ボランティアなどからの幅広い支援により実現した。

2025.09.09