李登輝友の会がセミナー開催 浅野・平成国際大学副学長が台湾の徴兵制再開について講演

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李登輝友の会がセミナー開催
李登輝友の会がセミナー開催

【東京訊】日台友好団体「日本李登輝友の会」は9月27日、東京都内で第99回セミナーを開催した。今回は、中国との緊張が高まる中で注目される台湾の防衛力整備問題に関連し、平成国際大学副学長の浅野和生氏が、台湾軍の徴兵制および志願兵制について講演を行った。

浅野氏によれば、李登輝総統は1997年、立法院(国会)で「精実案」(中華民国国軍軍事組織及び兵力調整計画案)を可決させ、「高層を精簡し、基層を充実する」をスローガンに掲げ、同年から2001年にかけて人員削減による少数精鋭化と、武器・装備の更新による戦力強化を推進した。兵員数は40万人から2002年には27万5千人まで削減された。浅野氏は、人口約2000万人の台湾において、成年男子の兵員40万人を維持するのは困難であり、軍を現実に即した形に適合させたものだと説明した。

平成国際大学副学長の浅野和生氏が、台湾軍の徴兵制および志願兵制について講演を行った
平成国際大学副学長の浅野和生氏が、台湾軍の徴兵制および志願兵制について講演を行った

兵役期間は当初2年間だったが、2000年から段階的に短縮され、2008年には1年間となった。さらに2012年には、軍の完全志願制への移行が決定された。徴兵制は、検査に合格した男子に4カ月間の軍事訓練を課すものの、兵役に就く義務兵は廃止された。

2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻は台湾に衝撃を与えた。さらに同年8月、ペロシ米下院議長(当時)の台湾訪問に際して中国が大規模な軍事演習を実施したことで、中国との緊張が一層高まり、台湾国内では政府(当時は蔡英文政権)に対応を求める世論が高まった。
これを受けて、同年12月、蔡英文総統は記者会見を開き、防衛力強化の一環として2024年1月から兵役制を1年間再開することを発表した。2024年に徴兵された義務兵は約9000人とされている。同時に、義務兵の待遇改善も行われ、兵役期間中には月額2万8590台湾元(約14万2千円)の手当が支給されることとなった(金額は2025年6月に改定されたもの)。この額は、1日8時間労働の法定最低賃金とほぼ同水準である。

一方、志願兵の数は緊張の高まりにもかかわらず減少傾向にある。立法院予算センターの2025年1月の発表によれば、2024年には16万余人分の予算が計上されていたが、同年6月時点での志願兵数は15万2885人と公表されている。この人数は2012年と比べて約1万2千人減少しており、課題が浮き彫りとなった。

志願兵と義務兵の役割については、蔡英文総統の記者会見などによると、志願兵は精鋭の「主戦部隊」として水際での侵攻阻止を担い、義務兵は1年間のうち前半で訓練を受けた後、後半に「守備部隊」として編成され、主戦部隊が撃退しきれず内陸に侵入した敵軍への対応を行う。義務兵の数は今後増加すると見込まれている。
浅野氏は台湾軍の変遷を説明した上で、「台湾軍の改革は李登輝総統時代に始まった。李登輝氏の功績は民主化だけでなく、軍の改革にも及んでいると評価してよい」と語った。セミナーには約30人が参加し、熱心に耳を傾けていた。

2025.09.30