【風雨を切り裂く女舵手――高市早苗、正念場の秋】

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【読者投稿】日本の政界が、26年ぶりの大波に飲み込まれようとしている。

10月10日、公明党の斉藤鉄夫代表が突如、自民党との連立解消を発表。「自公政権」という安定の象徴が、ついに幕を下ろした。

翌日の『日本経済新聞』は一面で「四半世紀の安定与党に幕」と大きく打ち出し、政界に衝撃が走った。

これにより、15日に予定されていた首相指名選挙は急きょ延期。

しかも斉藤氏は発表のわずか4日前、中国大使と面会しており、その微妙なタイミングが波紋を広げている。

*自公分裂の裏側と「遅すぎた離婚」

この決断は、高市早苗氏の首相就任への道に新たな試練をもたらした。

だが実際には、公明党と自民党の関係はすでに冷え切っており、今回の「別れ」は遅すぎた離婚とも言える。

理念も支持層も異なる両党が惰性で手を取り合ってきた時代は、もはや終わりなのだ。

*鍵を握る「三つのシナリオ」

首相を選ぶためには、憲法上、衆議院と参議院の双方で過半数の支持が必要だ。

いずれの候補も過半数に届かない場合は、上位2名による決選投票が行われ、両院の結果が異なれば衆議院が優先される。

現在の衆議院の勢力分布は以下の通り。
自民、立憲民主、日本維新の会、国民民主、公明――いずれも単独では過半数に届かない。

この状況下で新政権を成立させるには、「合従連衡(がっしょうれんこう)」の政治的駆け引きが不可欠だ。
シナリオは大きく三つに分かれる。

第一:自民党の単独政権

自民党は現在196議席。過半数(233)まであと37議席足りない。

高市氏が孤軍奮闘で首相に就任しても、「与党小さく、野党大きい」状況に変わりはなく、国会運営は難航必至だ。

いわば、逆風の中で舵を取る女船長のような試練が待ち受けている。

第二:他党との連立

立憲民主党はイデオロギー的に左寄りで、自民との協力は現実的でない。

一方、維新と国民は同じ保守系だが、「自民に吸収されるのでは」という警戒感を隠さない。

過半数を超えるには「自民+維新+国民」の3党連立が最も現実的な組み合わせだが、同時に最も難しい選択でもある。

高市氏にとって、これが最大の政治的試練となるだろう。

第三:「非自民」連立構想

国民民主の玉木雄一郎代表は、自民抜きの「非自民連立」に強い意欲を見せている。

しかし、立憲・維新・国民の3党を合わせても過半数には届かず、公明の協力なしでは政権樹立は不可能だ。

とはいえ、公明党は自民と決別したばかり。すぐに他党と組むのは理屈が立たない。

斉藤氏自身も「他党に票を回すことはない」と明言しており、このシナリオは机上の空論に終わる可能性が高い。

*迫る外交の大舞台

臨時国会は10月20日に召集される予定だ。

新首相が誕生すれば、わずか一週間後の27日にはトランプ前大統領の訪日、そして31日にはAPEC首脳会議が控えている。

つまり、新政権には準備期間がほとんどないのだ。

米中韓の首脳が集う外交の舞台で、即戦力として動けるリーダーは限られている。

寄り合い所帯の「非自民連立」では対応は難しい。

その点、党内抗争を勝ち抜き、気力も経験も充実している高市氏なら、柔らかさと強さを併せ持つスタイルで国際舞台を切り開くことができるかもしれない。

*日本の「鉄の女」は逆風を越えられるか

高市早苗氏の首相への道は、決して平坦ではない。

だが、この試練こそ日本政治の再生を促す「火の洗礼」とも言える。

嵐の中でこそ、真のリーダーの資質は問われるのだ。

彼女が逆風を切り裂き、舵を握り続けることができるか。

それは自民党の存続だけでなく、東アジア全体の政治地図をも左右する分岐点となる。

【国会勢力図(2025年10月14日現在)】

衆議院(465議席・過半数233)

自民党:196

立憲民主党:148

維新の会:35

国民民主党:27

公明党:24

参政党:3

その他:32

参議院(248議席・過半数125)

自民党:100

立憲民主党:42

国民民主党:25

公明党:21

維新の会:19

参政党:15

その他:26

2025年10月14日

医療法人輝生医院理事長 大田一博敬具