「台湾新南向政策と台日協力」~鄧振中政務委員が講演~

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日本台湾交流協会、九州経済連合会、台北駐福岡経済文化辦事處、九州経済国際化推進機構は7月19日、ホテルニューオータニ博多で「九州発日台アライアンス形成を目指して」と題するセミナーを開催し、台湾行政院、新南向政策担当大臣・鄧振中政務委員が「台湾新南向政策と台日協力」をテ-マに基調講演を行なった。(後援:台湾貿易センター)

セミナー冒頭の挨拶で九州経済国際化推進機構・麻生 泰会長(九州経済連合会会長)は、世界一の親日国である台湾が進める「新南向政策」をチャンスと捉え、九州の企業に積極的に関わってもらいたいと116人の参加者に呼びかけた。

続いて台北駐福岡経済文化辦事處・戎義俊處長は、最初に日本台湾交流協会、九州経済連合会、九州経済国際化推進機構との共催でこのセミナーが開催できたことに謝辞を述べた。

台北駐福岡経済文化辦事處・戎義俊處長の挨拶

更に、ここで使われている「アライアンス」という言葉に触れ、今まさに日本と台湾は経済・貿易・投資に関して同盟関係にあること。日台相互訪問者総数が昨年600万人を超えるなど、非常に良好な環境の中で鄧振中・新南向政策担当大臣を迎えることができたことは、日本及び九州が台湾との新たな関係を構築するための重要なきっかけであり、画期的なことであると指摘した。

また、将来の両国関係の担い手となるべき日本の若年層に台湾への認識を深めてもらうために9月1日から、九州大学に「台湾研究講座」を設けることになったことを披露して挨拶を締めくくった。

基調講演において鄧振中政務委員は、最初に、台湾がBSEの発生を理由に禁止していた日本産の牛肉の輸入を14年ぶりに解禁することになったため、間もなく台湾でも美味しい和牛を食べられるようになると報告し、会場の空気を和らげた。

116人の参加者を前に講演を行う鄧振中政務委員

次いで様々なデータを駆使しながら、台湾経済の概況、国際情勢の中における課題、新南向政策推進戦略、台湾と新南向国家とのかかわり、新南向国家自体の経済状況、台日アライアンスによる新南向市場の開拓、日本と台湾双方の強みを組み合わせた具体的な協力方法等について説明し、所信を述べた。

様々なデータを駆使して新南向政策とそれを取り巻く環境を説明

台湾自体の今後の産業政策については、アジアシリコンバレーを作ってIOT産業を推進し、そこで開発された技術を元々台湾が強い機械産業に応用して「スマート機械」を作ること。更にそれを発展させて防衛産業の強化に結び付けること。2025年の「原発ゼロ」に向けて再生可能エネルギーを開発すること。医薬・バイオ産業に大きい投資をすることなどが示された。

また、新南向政策の対象国の中には統治が簡単ではない多民族・多言語国家が含まれること。インフラが未整備であり貧富の差が大きいこと。政策の透明度が低いこと。土地や労働力のコストが上昇中であることなどの問題もあるが、それらの国の若者には台湾に留学して教育を受けたものも多く、台湾に良い印象を持っているため、パイプ役になってもらえる可能性があることを指摘した。

最後に日本とのアライアンスについては、現に台湾にとって日本が第三位の貿易相手国であるという実績の上に、日本企業の開発力、ブランド力と台湾企業の量産化力、スピード力、多様な言語力などを組み合わせることによって両国のみならずアジア太平洋地域全体のwin-win関係を構築したいと締めくくった。

講演終了後、フロアから「九州は環境対策で非常に苦しんだ時期があったが、台湾ではどうか?」という質問に対して、鄧振中政務委員は「台湾ではいま大気汚染や工業廃棄物の処理が問題になっている。小さな国にだけに工場と住宅地が近く、迅速な問題解決が要求される。政府は汚染物質を出さないこと、リサイクルをはかり循環型経済を目指すことを目標に投資を行っている。この実現過程におけるマーケットは大きいと思うので、解決した経験を持つ九州の企業や自治体にぜひ参加して欲しい」と述べた。

フロアからの質問

フロア外で出された「新南向政策が中国を刺激することになるとうまく行かないのではないか? 中国を刺激せずに成功するための工夫はあるか?」との問いについては、「新南向政策は、中国を意識したものではなく、台湾自身の20年先を考えて進めるものである。この政策は将来的に対象国にも台湾にも有益なものとなろう」と答えた。

また「中国との関係において、新南向政策に日本の大企業が参加するのは難しいのではないか? 中小企業の方が参加しやすいのではないか?」という質問については「三菱重工業のような大企業も台湾で発電所を建設しており、彼らが特に中国に遠慮して動けないとは思わない。それより知的財産権の扱いなどについては、台湾はしっかり整備されており、日本の大企業が仕事をする相手としては取り組みやすいのではないか。もちろん台湾と協力することによって、日本の企業が中国から不利益を受けないことが望ましい」と述べた。

フロア外の質問にも丁寧に応対