李元総統の弔意訪台は海外初~安倍首相の意向

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弔問団一行は追悼会場が設置されている台北賓館を訪れ追悼した(中央社提供)

 蔡英文総統は8月9日、7月30日に死去した李登輝元総統に弔意を示すため、弔問団とともに訪台した森喜朗元首相(弔問団団長)らと台北市内の総統府で面会した。森氏は「李元総統の弔意の訪問は安倍晋三首相の意向です」と改めて強調。弔問団の派遣の背景については、日本の国会議員の間で党を超えて「どこの国よりも一番早く、外国の弔問客として日本の政治家が行くべき」との声が上がっていたと説明。一行は追悼会場が設置されている台北賓館を訪れ追悼した。

 森氏は遺影に向かって弔辞を読み上げ、台湾の総統と日本の首相として、それぞれの立場はあったとしつつ、「お互いの人間としての友情や尊敬は一度も揺らぐことはありませんでした」と語った。取材陣からの質問には「日本人が知らなかった事をよく知っている」と話し、敗戦後、自虐的になった日本人に李氏は「誇りを持つべきだ」と訴えた事に感銘を受けたと振り返った。

 その後の会談で蔡総統は、一行に謝意を伝えるとともに、李登輝元総統が退任後も、日本との関係促進に取り組んでいたことを紹介。また、新型コロナウイルスの影響で延期となった東京五輪・パラリンピックが2021年に成功する事を願うとの立場を示し、それに向けて台湾は全力で支援すると述べた。

 弔問団は、日本の対台湾窓口機関、日本台湾交流協会と超党派議員連盟「日華議員懇談会」が派遣。安倍首相の実弟、岸信夫衆院議員など与野党の議員が複数参加した。李氏の逝去後に海外から派遣された最初の弔問団となった。なお一行は、新型コロナウイルス対策のため、チャーター便を利用し日帰りで訪台。台北賓館を後にすると、その足で空港に向かい、帰国の途についた。

 団長を務めた森氏は首相在任中の2001年、訪日を希望した李氏へのビザ(査証)発給を決めていた。

日本の弔問団に感謝を表明

 蔡英文総統は8月9日、自身のフェイスブックとツイッターを更新し、李登輝元総統の追悼のために日帰りで台湾を訪問した森喜朗元首相率いる訪問団に謝意を表した。フェイスブックには中国語と日本語で投稿。自身の似顔絵が表紙となった日本の漫画雑誌を森氏から贈られた事や、台日友好の強化、新型コロナウイルスの早期収束などを願う気持ちも伝えた。

  ツイッターでは、徳川家康の辞世の句「嬉やと二度醒めて一眠り 浮き世の夢は暁の空」を取り上げ、「李登輝元総統は生前良く徳川家康に例えられましたが、家康公の辞世の句なら、李元総統も同感されるかもしれません」と李氏を偲んだ。