双十国慶節祝辞 台北駐日経済文化代表処 代表 沈斯淳
10月10日は中華民国の建国を祝う双十国慶節記念日であります。孫文先生が1911年の辛亥革命によって中華民国を建国し、今年は101回目の国慶節を迎えることとなりました。
今年台湾では1月14日に総統選挙を実施し、馬英九総統が再選されました。台湾では国民による直接投票で選出される総統選挙が1996年以来、これまで5回実施されましたが、今回は特に平和的・理性的に選挙活動が進められ、台湾の民主主義が一層成熟したと国際社会からも高い評価を受けました。
再選された馬総統は5月20日に就任4周年を迎え、2期目の任期に入りました。私は馮寄台・前駐日代表の後任として、5月30日に駐日代表に着任しました。私は今回、初の日本駐在ですが、以前より外交部常務次長(事務次官)として対日外交に関わってきました。東京羽田空港に降り立ったとき、在日台湾華僑の皆様および日本人の皆様の熱烈な歓迎を受け、非常にありがたく感じたと同時に、良好な台日関係を発展させていくことへの重責を、強く実感いたしました。
昨年は、東日本大震災により、日本は未曾有の被害を受けました。台湾も日本と同様に地震等の自然災害が頻発する国であり、台湾で以前、震災や水害が発生した際には、日本から大きな支援が寄せられたことから、台湾の人々は、日本で発生した震災をわがことのように受け止め、自発的に救援物資や義援金寄付などの支援活動を行いました。
私も着任以来、東北の被災地を何回か訪問し、今年8月には台湾赤十字が支援して建てられた福島県相馬市の災害公営住宅「相馬井戸端長屋」の竣工式に出席し、台湾からの支援の成果を確認してまいりました。また、日本の震災復興が力強く着実に進みつつあることが実感できました。そのほかにも台湾の民間の慈善団体が被災地の支援活動に熱心に取り組み、現地の人々から大変感謝されたことを、私は台湾の駐日代表として大変誇りに思います。このような台湾と日本の友好の絆をこれからも大切にしていかなければなりません。
台日関係は、前任の馮代表の3年余りの在任中に、駐日代表処札幌分処および台北文化センターの開設、台日間のワーキングホリデー協定、投資協定、航空自由化協定等の締結、そのほか日本の国会における「海外美術品等公開促進法」の成立によって台北の国立故宮博物院の文物が日本で展示できるようになるなど大きな進展がありました。
私はこれまで諸先輩の皆様方が築き上げてこられた良好な基礎の上に、台日関係の新たな局面を切り開いていく所存であります。また、台日関係進展のために日本の国会で長年にわたりサポートしてくださっている日華議員懇談会の平沼赳夫会長をはじめとする日本の衆参両院の国会議員の先生方に、厚く御礼申し上げます。今後とも引き続き良好な台日関係を共に推進、発展させていくためにお力添えを賜りたく存じます。
台日間の往来は、昨年11月に締結した航空自由化協定によりオープンスカイが実現し、今年春から新たに静岡、鹿児島、富山、函館、旭川、釧路などの各都市と台湾を結ぶ航空路線が次々と開設されたことにより、今年上半期の台日間の旅行者数は順調に増加し、約145万人となり、今年は昨年の250万人を大幅に上回る300万人の目標を達成できる見通しです。
経済面では、昨年9月の台湾投資協定締結後、さらなる台日経済連携を推進していくため、昨年12月に行政院が「台日産業連携架け橋プロジェクト」を認可し、今年3月21日に台湾側の投資の窓口である「台日産業連携推進オフィス」が開設されました。昨年の日本から台湾への投資件数は441件で、過去最高を更新しました。また、日本企業が「両岸経済協力枠組み協議」(ECFA)の関税減免措置等を活用して台湾を大中華市場のゲートウェイにできることから、今後台日企業が提携して中国大陸及び第三地市場に共に進出するビジネスモデルがますます広がることを期待しています。
文化面では、今年5月に当駐日代表処で「八田與一展」を開催いたしました。八田氏は、石川県出身の土木技師で、日本統治時代の台湾で、嘉南平原を潤す烏山頭ダムと灌漑水路の建設に大きな貢献を果たしました。烏山頭ダムには昨年、八田與一記念公園が開園し、今年4月には八田技師と同じ石川県出身の森喜朗・元首相に台日友好「絆の桜」植樹式にご参加いただきました。烏山頭ダムは私の故郷である台南市にあり、このような形で台日間の友好交流が深まることを大変うれしく思います。そのほか、今後の台日間の主な文化交流は、来年4月に宝塚歌劇団の台湾公演を予定しているほか、2014年には日本で国立故宮博物院文物の特別展開催を予定しています。
最後に、皆様のご健勝と、ご多幸を祈念し、中華民国と日本国の一層の友好と発展を願い、私の挨拶とさせていただきます。