台湾行政院農業委員会と台湾物産館を運営する池栄青果株式会社(本社=東京都豊島区)は、第三回対日貿易商談会九州産地視察・見学会(以下「九州産地視察会」)を11月14日から18日の日程で開催した。この視察会は台湾の果物農家や流通業者、行政関係者を集めて九州地区で開催されたもの。九州3県(福岡、熊本、鹿児島)の果樹農園や選果場、流通市場(百貨店・道の駅)など、出荷から流通までの過程を実際に見学・体験する事で、日本式の現代的農業技術や流通手法を吸収してもらうのが狙い。
参加した台湾のマンゴー農家は「南国の果物を寒い日本で栽培していて不思議だった。日本の農家がビニールハウスなど様々な工夫と努力を惜しまず美味しい果物を提供しようとする姿勢は大変参考になった。日本の農家に負けないように美味しいマンゴーをつくりたい。」と九州産地視察会の感想を述べた。
台湾行政院農業委員会国際処簡任技正の戴徳芳氏に話を聞くと、「実は九州産地視察会にはもうひとつ目的があります。それは今回参加している台湾でも優秀な農家・流通業者と行政の関係者との絆を強めることです」と流暢な日本語で回答した。「今回のように農家・流通業者と行政関係者が一つの団体として視察・見学会を実施することは初めてのことで、数日間の日程の中で仲間として交流を深め絆を強めることで、今後、生産から流通までの協力体制を強化できればと願っています。今まではそれぞれ個別に活動していたことも、今回ホットラインを構築できたので、台湾における様々な農産品に関する問題解決も素早くなることでしょう」とのこと。さらに、「将来的にもっと多くの日本の消費者に台湾の美味しい農産品を届けたい」との強い思いを語った。
九州産地視察会を企画した池栄青果株式会社の藤田克己社長は、約10年前から、より安価なマンゴーを求めて台湾に渡り、現地で果物の流通に関する人脈を築いてきた。それが縁となり台湾の国家プロジェクトである台湾物産館の国際入札を打診された。約6年半前の2006年7月に国際契約上の困難を乗り越え台湾物産館をオープンさせ、現在に至るまで台湾と日本の農業関係者にお互いの産地を交互に見学させるなど、対日貿易商談会の開催に尽力している。実は今回の視察先である農業施設の一部は、特産品技術の流出を恐れ海外からの視察を拒否しているそうだが、藤田社長の交渉により今視察は特別の了承を得られたという。
藤田社長によると、「台湾の農産物、特に果物は非常に美味しい。しかし、日本のような厳格な規格がなく、良いものと普通のものが混ざってしまうことで平均売価を下げてしまったり、表示された重量が包装の重さを足したものの場合があったりと消費者側からみて改善できる点が多い。まして流通に関しては、台湾には日本のスーパーにあたる流通施設があまりなく、一般的には市場を形成して売買をしているため、日本の道の駅のような地産地消型の特産品市場のような流通施設は今後台湾で発展する可能性がある」と指摘。「農家や流通業者の努力や勉強、誠実さは農産品を通じて消費者に必ず伝わるということを感じて欲しい、日本も台湾も農産品に携わる人々の気持ちはみな同じなのだから」と自論を話していた。